AI概要
【事案の概要】 被告人は、別居中の妻である被害者(当時36歳)に対し、復縁と子の引渡しを求めていたがこれを拒絶された。被告人は、被害者が息子を連れて実家に帰ろうとしていたことや、被害者が息子に薬を無理やり飲ませる様子を見たことなどから、息子が被害者から虐待を受けているとの思いを募らせ、被害者の殺害を決意するに至った。 被告人は、犯行前日に犯行態様・犯行場所・偽装工作の方法などを周到に計画した上、平成30年11月2日、荷物の搬出のために被告人方を訪れた被害者に対し、まずその友人の訪問時間を確認して犯行の時間的余裕を見計らい、背後から重量約674グラムの金属製ハンマーで被害者の背部を数回殴打した。さらに脱力して倒れた被害者の頸部をハウスバンドで強く絞め続け、確実な死を期すため同バンドを頸部に一周させて縛り付け、絞頸による窒息死をもって殺害した。 殺害後、被告人は被害者の携帯電話機から友人や知人に対し被害者を装ってメッセージを送信し、訪問を阻止したり生存を装ったりするなど複数の偽装工作を行った。その上で、遺体をフレキシブルコンテナバッグに収納し、貨物自動車で北海道三笠市内の山中まで運搬して、市道沿いを流れる川の法面に投棄した。遺体は約1か月以上にわたって放置され、その大部分が失われる結果となった。 本件は、殺人罪および死体遺棄罪に問われた事案である。 【判旨(量刑)】 本件犯行において特に重視されたのは、被告人が強固な殺意に基づき、あらかじめ犯行計画を立て、これを確実に実行した点である。被害者の動きを封じるためのハンマー殴打から、絞頸、確実な死を期するための縛り付けまでの一連の行為は、ためらいや偶発性をうかがわせるものではなく、計画性が顕著に認められた。弁護人は、被告人がハンマーを出し入れしてためらう様子を見せていたとして強固な殺意を争ったが、犯行の一連の経緯に照らし、その認定は揺らがないとされた。 動機について、被告人は息子への虐待を懸念していた旨供述するが、被害者の行為は薬を飲ませたり尻を叩いたりする程度の事情にとどまり、関係機関への相談など殺人以外の選択肢は多数あった。それらを十分検討せず、殺人・死体遺棄という最悪の手段を選択した判断は厳しく非難されるべきであり、母親を失い父親が殺人犯となる息子の将来を考えれば、「息子のため」という動機は独りよがりに過ぎないと評された。 被害結果も極めて重大であり、36歳の被害者は若くして命を奪われ、山中に投棄された遺体は死者としての尊厳も踏みにじられた。遺族の処罰感情も峻烈であり、本件は家族関係を動機とする配偶者殺害の事案の中でも最も重い類型に位置付けられると判断された。 他方、被告人には前科前歴がなく、事件後に事実を認めて事案の解明に一定程度寄与したことなどの有利な事情も斟酌された。これらを踏まえ、求刑懲役20年に対し、懲役18年が言い渡された。殺人に用いられたハンマー1本は、刑法19条1項2号により没収された。本判決は、計画的で偽装工作を伴う配偶者殺害事案における量刑判断の一例として、裁判員裁判による事実認定と量刑評価の枠組みを示すものといえる。