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下級裁

覚せい剤取締法違反

判決データ

事件番号
平成30わ1285
事件名
覚せい剤取締法違反
裁判所
名古屋地方裁判所
裁判年月日
2019年7月12日
裁判官
岩田澄江

AI概要

【事案の概要】 本件は、被告人が交際相手Bと共謀の上、平成30年7月26日頃、名古屋市内のホテルにおいて、Bから覚せい剤水溶液を身体に注射してもらい、もって覚せい剤を使用したとして、覚せい剤取締法違反で起訴された事案である。被告人は当時50歳の主婦であり、夫が経営する飲食店の役員として勤務していた。夫は約20年来、非行少年の補導委託や受刑者の就労支援に協力しており、三重刑務所を満期出所したB(当時27歳)を同店の従業員として雇用していた。 被告人とBは3月頃から男女関係を持つようになったが、4月頃からBは性交渉の際に被告人に薬物を使用するようになり、6月頃からは頻繁に殴る、蹴るなどの暴力を振るうようになった。さらにBは被告人に多額の金銭を要求し、被告人は消費者金融からの借入れ、夫の口座からの無断引出し等により2か月弱の間に合計1000万円以上をBに交付した。7月22日、Bは初めて注射器を用意して薬物の使用を持ちかけ、以降26日までに3回にわたり被告人に薬物(うち26日分が本件覚せい剤)を注射した。7月27日、被告人は夫や二男に「殴られ蹴られ、薬を打たれている。もう逃げられない」等のメッセージを送り、これを受けた二男が警察に通報した結果、被告人は逮捕された。逮捕時の被告人の身体には顔面、両上肢、胸部、腹部等に多数の皮下出血や打撲痕があり、全身に新旧の打撲痕が認められていた。 【争点】 被告人が自らの意思でBに本件注射をしてもらったといえるか、すなわち被告人に覚せい剤使用の故意及びBとの共謀があったかが争点となった。被告人は、本件注射を打ちたいという思いはなく、Bの繰り返しの暴力により恐怖を感じて断れなかったと主張し、検察官は、被告人が自ら注射器の針を自己の血管に刺したこと、本件注射の際にBから明示的な暴行・脅迫がなかったこと、2回自宅に戻る機会がありながら再びBの元に戻ったことなどから、被告人には覚せい剤使用の認容があったと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は被告人を無罪とした。被告人は本件注射の際、注射されるものが覚せい剤であることを疑っていたと認められるものの、本件に至るまでの2か月弱の間にBから激しい暴力を繰り返し受け、暴力を避けるため1000万円以上もの金銭を交付せざるを得なかった状況からすれば、Bの暴力により恐怖心を抱き、Bの意に反する行動を取ることが困難な心理状態にあった可能性を否定できないと判断した。 検察官の主張については、被告人が准看護師の資格を有し自ら針を刺したのはBがうまく刺せなかったためであってBの意を受けた行為にすぎないこと、明示的な暴行・脅迫がなくてもBの機嫌を損ねることへの恐怖から従わざるを得なかった可能性があること、Bから「家に火をつけるぞ」等と脅され携帯電話も管理されていた状況において家族や警察に助けを求められなかったことは不自然ではないこと等を指摘し、いずれも採用できないとした。 7月27日に被告人が「あういうものは寂しい人がやるんじゃないの」と発言して薬物使用を拒んだ点も、繰り返される注射による体調悪化への恐怖が殴られる恐怖に勝った結果と理解できるのであって、本件注射時点での主体的意思を裏付けるものではないとされた。 結論として、被告人がBに本件注射をしてもらおうという主体的意思を有していたと評価することは困難であり、覚せい剤使用の故意及び共謀について合理的疑いが残るとして、刑事訴訟法336条により無罪を言い渡した。被告人の意思に反して薬物を注射された場合、それを受け入れざるを得なかった心理的強制の有無を慎重に検討した事例として意義がある。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。