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行政

遺族厚生年金不支給処分取消請求事件

判決データ

事件番号
平成29行ウ247
事件名
遺族厚生年金不支給処分取消請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2019年7月12日

AI概要

【事案の概要】 本件は、老齢厚生年金の受給権者であった夫を亡くした妻が、遺族厚生年金の裁定請求をしたところ、処分行政庁から「夫によって生計を維持していたものとは認められない」として不支給処分を受けたため、その取消しを求めた行政訴訟である。 遺族厚生年金は、被保険者等が死亡した当時にその者によって生計を維持していた配偶者等に支給されるものであり(厚生年金保険法59条1項)、厚生年金保険法施行令3条の10は、生計維持の認定要件として、被保険者等の死亡当時に生計を同じくし、かつ「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」であることを定めている。その金額は年額850万円とされ、実務上は「生計維持関係等認定基準」により、前年の収入や所得が基準額未満である場合のほか、定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)に収入又は所得が基準額未満となると認められる場合(本件収入要件)にも該当するものとされている。 原告はA市議会議員を4期16年にわたり務め、前年の議員報酬収入は約866万円で基準額を上回っていた。夫の死亡時、原告は4期目の任期中であり、任期満了まで約3年半が残されていた。原告は、夫の死亡前から次期選挙には立候補しないことを決めており、任期満了後は収入が基準額未満となることが明らかであったと主張し、この点を看過した処分は違法であるとして、本件処分の取消しを求めた。 【争点】 本件基準時(夫の死亡時)において、原告が厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるか、具体的には、近い将来(おおむね5年以内)に収入・所得が基準額未満となると客観的な根拠をもって判断できる者(本件収入要件を満たす者)に該当するかが争われた。 原告は、市議会議員の任期満了により当然に地位を喪失すること、市民派議員として後援会の支援や選挙費用調達が困難であったこと、市民派議員は多選を避ける考え方が共有されていたこと、体力・意欲が低下していたこと等を挙げ、次期選挙に立候補しないことが客観的に明らかであったと主張した。これに対し被告は、本件収入要件は「死亡時における事実に基づき、近い将来に収入が基準額未満となることが客観的に予見し得る場合」に限り例外的に適用されるべきであり、原告の主張する事情はいずれも主観的・流動的な消極材料にすぎないと反論した。 【判旨】 東京地裁は、原告の請求を棄却した。 裁判所は、まず厚年令3条の10にいう「将来」とは比較的近い将来を意味し、生計維持関係等認定基準が定める本件収入要件、すなわち「おおむね5年以内に収入・所得が基準額未満となると客観的な根拠をもって判断することができる者」に該当する必要があるとの判断枠組みを示した。 その上で、原告については、過去4回の選挙でいずれも上位当選を重ねており、立候補すれば当選する相当程度の蓋然性があったと認定した。また、現職議員は他職への転身・高齢・疾病等の特段の事情がない限り再選を目指すのが通常であり、再選を重ねるほどその傾向が強まるとの経験則も指摘した。 選挙費用や後援会の不存在を理由とする立候補困難の主張については、選挙費用の多寡と得票数に明らかな相関関係があるとの経験則はなく、原告自身の5期目選挙も費用削減下で得票数を伸ばしていること、一定範囲の選挙活動費用は公費負担制度があり、ネット選挙活動も可能であること等を踏まえ、立候補・当選が客観的に不可能とまでは認め難いとした。市民派議員の多選回避の考え方も、客観的な裏付けを欠き拘束力も不明であるとされた。体力・意欲の低下も重篤な疾病等の客観的事情が認められず、主観的事情にとどまると判断された。 次期選挙に立候補しない旨を親しい者に伝えていた点についても、その決心を公にしておらず、後継者も具体的に見出せていなかったことから、決心を覆して立候補することが不合理とはいえず、客観的な根拠にはならないとした。 結論として、原告が任期満了により議員の地位を喪失することが客観的に明らかであったとしても、立候補しないこと又は立候補しても当選できなかったことを客観的な根拠をもって認めることはできず、本件収入要件を満たすとはいえないとして、本件処分を適法と判断した。 本判決は、遺族厚生年金における「将来にわたる収入」要件の判断につき、生計維持関係等認定基準に沿った客観的予見可能性を厳格に要求する立場を示したものであり、任期制の地位にある者の生計維持認定に関する実務上の指針となる事例である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。