固定資産価格審査申出棄却決定取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行ヒ139
- 事件名
- 固定資産価格審査申出棄却決定取消請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2019年7月16日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄差戻
- 裁判官
- 宮崎裕子、山崎敏充、戸倉三郎
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、東京都内に9階建て事務所ビル(平成元年建築)を所有する上告人が、東京都知事によって決定され固定資産課税台帳に登録された平成24年度の固定資産税評価額(約6億8800万円)を不服として、東京都固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたが棄却されたため、その決定の取消しを求めた事案である。 固定資産税は、市町村(東京都の特別区では都)が毎年1月1日時点の固定資産の所有者に対して課す地方税であり、その課税標準となる価格は総務大臣が告示する固定資産評価基準に従って市町村長が決定し、固定資産課税台帳に登録される。納税者がこの登録価格に不服がある場合、市町村長ではなく中立の第三者機関である固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができ、その決定に不服があれば取消訴訟を提起できるという仕組みになっている(地方税法432条、434条)。 上告人は当初、経年減点補正率の適用に誤りがあるとして審査申出をしたが、第1審で敗訴した後、控訴審において、評価額算定の基礎とされた本件建物の主体構造部(鉄筋・コンクリート)の使用量に誤りがあるとの主張を追加し、これに伴って取消しを求める価格の範囲を拡張する請求の趣旨変更を行った。 【争点】 審査申出人が、審査委員会における審査の際に主張しなかった違法事由を、審査決定の取消訴訟において新たに主張することが許されるか否かが争点となった。原審(東京高裁)は、審査を経ていない事由については、行政事件訴訟法8条2項3号の「正当な理由」がある特別の事情がない限り、審査請求前置主義の趣旨に反して許されないとして、追加された主張に係る請求の趣旨変更部分を不適法として却下していた。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、本件を東京高裁に差し戻した。 最高裁は、地方税法が固定資産税の価格について審査委員会への申出及び審査決定取消訴訟によってのみ争うことができるとした趣旨は、納税者の権利保護と課税行政の適正運営の確保にあると位置付けた。その上で、審査委員会は職権により審査に必要な資料を収集できること等から、申出人が主張しない事由についても審査の対象とすることができ、委員会の審査対象は登録価格の適否判断に必要な事項全般に及ぶと判示した。 したがって、取消訴訟において問題となるのは委員会による価格認定の適否であり、その違法性を基礎付ける具体的な主張は単なる攻撃防御方法にすぎない。それゆえ、審査申出人が審査の際に主張しなかった違法事由を取消訴訟において主張することは、審査請求前置主義を定めた地方税法434条2項等の趣旨に反しないと判断した。 また、取消しを求める価格の範囲を拡張する請求の趣旨変更についても、これは勝訴判決の上限を画する訴訟行為としての意味を持つにすぎないから、主張追加に伴って上限を変更することは許されると判示した。本判決は、固定資産税評価をめぐる不服申立て・訴訟実務において、審査委員会に対する主張と訴訟における主張との関係を明らかにした重要な判断であり、納税者の司法救済の途を広く認めた意義を有する。