AI概要
【事案の概要】 原告は、インターネットを利用した情報提供サービス等を営む株式会社であり、「競艇予想のプロ集団 TOP TREND」という標題のもと、会議室で整然と並んで座る8名の人物を被写体とする写真や「徹底!当日主義!!徹底!現場主義!!」といったキャッチコピー等を組み合わせたウェブ広告を、自社の競艇予想サイトのトップページに掲載していた。 ところが、被告が運用するレンタルサーバ上に開設された「比較競艇.net」というウェブサイト内のウェブページに、原告サイトの広告画像がそのまま縮小された形で掲載され、さらに「悪評」「このサイト、上手いこと法のギリギリやってる、信じたらバカみるょ。」「全て嘘。何もかもが嘘で固められている」などと原告サイトを批判する記載が掲載された。 原告は、当該掲載行為により、①広告についての複製権が侵害され、また②社会的評価が低下し信用が毀損されたと主張し、発信者に対して損害賠償請求等を行うため、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項に基づき、ホスティング事業者である被告が保有する発信者の氏名、住所、電子メールアドレス等の開示を求めて提訴した。本件は、インターネット上の匿名表現による権利侵害に対し、被害者が加害者を特定するための入口となる重要な制度運用の場面である。 【争点】 争点は、①原告の著作権(複製権)侵害が明らかであるか、②原告の社会的評価の低下・信用毀損が明らかであるか、③発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか、の3点である。被告は、広告に著作物性がない、原告が著作権を有するか不明、画像は依拠して作成されたものか不明で画質も粗いため本質的特徴を感得できない、仮に複製に当たるとしても批評目的の適法な引用(著作権法32条1項)に該当する、などと反論した。 【判旨】 東京地裁(民事第29部、裁判長山田真紀)は、原告の請求を認容した。まず、広告中の写真については被写体の選択・構図等において撮影者の思想又は感情が創作的に表現されており写真の著作物として認められ、広告全体としても一定の個性が発揮されているとして著作物性を肯定した。著作権の帰属についても、広告右下の「Copyright 2004-2018 Top trend Co..Ltd.」との表示により原告が著作者と推定され、これを覆す証拠はないとして、原告に著作権が帰属すると認定した。 そのうえで、問題の画像は本件広告をそのまま縮小して掲載したものであり、特徴的部分である写真を覚知できるから、広告に依拠して再製した複製に当たると認定した。適法な引用の成否については、批評対象サイトの特定のためであっても、サイト名やURLの掲載に加えて広告を複製して掲載する必要性が高いとはいえず、引用の目的上正当な範囲内のものとは認められないとして、著作権法32条1項の適法な引用の主張を排斥した。 以上より、複製権侵害の明白性を認定し、原告には発信者に対する不法行為に基づく損害賠償請求のため発信者情報の開示を受ける正当な理由があるとして、争点2(名誉毀損)を判断するまでもなく、氏名・住所・電子メールアドレスの開示を命じた。批評サイトにおけるサムネイル的な画像転載であっても、必要性の観点から厳格に引用該当性を判断した事例として、実務上意義がある。