特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、アイメイク施術台に関する特許第5920790号を有する原告タカラベルモント株式会社が、被告株式会社アイラッシュガレージ及び親会社である被告株式会社ビューティガレージに対し、被告らが販売するアイラッシュ専用チェアが本件特許権を侵害するとして、特許法100条に基づく差止め・廃棄と同法102条2項に基づく損害賠償を求めた事案である。 本件発明の特徴は、被施術者の頭部を載せる施術部の周囲に施術者の肘を固定できる肘置き部を設け、この肘置き部が施術部の上方部に連結されて水平を軸に回動可能とした点にある。まつ毛エクステンション等のアイメイク施術は長時間にわたり細かな手の動きを要するため、従来の脇を閉めて肘を固定する姿勢は不安定で施術者の身体的負担が大きいという課題があり、本件発明は肘置き部の角度調整により多様な施術を一台で可能にする。被告製品は施術部の左右側面の中央線より上の位置にコの字状のリクライニングアームを回動部材で連結する構造で、構成要件C以外の充足には争いがなかった。 【争点】 被告製品が構成要件C(「肘置き部が施術部の上方部に連結され、水平を軸にして施術部に対して回動可能」)を充足するかが主たる争点であり、特に「施術部の上方部」の解釈が問題となった。原告は施術部の上下中央線より上の部分(施術部自体を含む)と主張したのに対し、被告らは出願経過の補正経緯や明細書の図面を根拠に「施術部よりも上方」(施術部自体を含まない)と解すべきで、左右側面で連結する被告製品は技術的範囲外と反論した。このほか差止めの必要性、損害額算定(消費税の処理、寄与率による推定覆滅)も争われた。 【判旨】 大阪地裁は、構成要件Cの「施術部の上方部」について、構成要件Bの「上方位置」とは別異の意味として補正で追加されたこと、アイメイク施術が被施術者の目尻・目頭等を対象とするため肘置き部も施術部位に近接する位置で連結されるのが合理的であることを踏まえ、施術部における上方部(上下中央より上の部分)を指すと解した。「連結」も施術部と肘置き部が別々に動作しない形態を意味し具体的方法は限定しないとして、被告製品は構成要件Cを充足し本件発明の技術的範囲に属すると判断した。差止め・廃棄はウェブサイトで販売の申出が継続していた事実から必要性を認めた。損害額は税込売上から税込原価を控除した951万余円を利益額とし、知的財産権侵害の損害賠償金は消費税の課税対象となるから消費税相当額を含めて算定すべきとした。寄与率による推定覆滅は本件発明が施術台全体に関するものとして斥け、弁護士費用120万円を加えた合計を販売台数で按分し被告ビューティに633万余円、被告アイラッシュに438万余円の支払を命じた。本判決は、明細書の図面のみに依拠した限定解釈を排し、課題解決の観点と出願経過を総合参酌して特許請求の範囲を画定した事例である。