廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が自宅敷地内において廃棄物である木材等を焼却したとして、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)16条の2の焼却禁止規定違反に問われた事案の控訴審である。原審である東広島簡易裁判所は、被告人が約1.4立方メートル、重量換算約512キログラムの大量の廃棄物を焼却したと認定し、さらに、その火が被告人所有地から隣地の枯草に燃え広がり、着火地点から約22.1メートル離れたコンテナが全焼するなど近隣周辺への延焼の危険を生じさせたとして、被告人を罰金50万円に処した。 焼却行為の後、被告人自身が119番通報し、消防から連絡を受けて臨場した警察官の事情聴取に対しても、自ら廃材を燃やした旨を素直に供述したという経緯で事件が発覚している。 被告人側は、原審の量刑は焼却物の重量認定を誤っているうえ、廃棄物処理法の保護法益の対象外である焼却に伴う公共の危険の発生を重視するなどしており、重過ぎて不当であると主張して控訴した。 【争点】 廃棄物処理法16条の2違反の焼却罪の量刑において、(1)焼却に伴い生じた延焼やコンテナ全焼といった「公共の危険」の発生を犯情として重視することの当否、(2)原審が前提とした焼却廃棄物の重量(約512キログラム)の認定の合理性、の2点が争点となった。 【判旨(量刑)】 広島高裁は、原判決を破棄し、被告人を罰金30万円に処した。 まず公共の危険の評価について、廃棄物処理法は廃棄物の適正な分別・保管・処分等により生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とし(1条)、焼却禁止規定(16条の2)は廃棄物の不適正処理防止のため処理基準に従わない焼却を直接罰の対象としたもので、焼却に伴う火力による危険惹起の防止を規制目的に含むものではないと判示した。検察官が主張する「公共の危険」は本来、放火・失火罪の処罰対象であり、焼却禁止違反の量刑に当たって火力による公共危険の惹起を犯情として重視することは相当でなく、原判決は建造物等以外放火罪において処罰されるべき要素を不当に重視した疑いがあるとした。 次に廃棄物重量の認定についても、積み上げ前の廃材の幅・高さから体積を算出し、平均的な床板一枚の体積で除して枚数換算し、現場発見の廃材1枚の重量約0.9キログラムを乗じるという算定方法は、木材が隙間なく詰め込まれていたことを前提とするうえ、廃材以外のダンボールや家庭ゴミを含む可能性も排斥できず、基準とした廃材の体積も不明確であり、環境への負荷の程度の指標となる重量評価を誤った疑いがあるとした。 以上に加え、被告人自身が119番通報して犯行を素直に供述したという発覚経緯も踏まえ、原判決の量刑は重過ぎて不当であるとして、刑訴法397条1項、381条により原判決を破棄し、自判により罰金30万円(労役場留置換算額5000円)に減軽した。本判決は、廃棄物処理法違反の量刑において、同法の保護法益の範囲を画し、火災罪類似の公共危険要素を過度に評価することを戒めたものとして実務上の意義を有する。