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下級裁

築炉じん肺損害賠償請求事件

判決データ

事件番号
平成28ワ1903
事件名
築炉じん肺損害賠償請求事件
裁判所
福岡地方裁判所
裁判年月日
2019年7月18日
裁判種別・結果
棄却
裁判官
足立正佳永田早苗川上タイ

AI概要

【事案の概要】 本件は、築炉業を営む被告会社に雇用され、築炉工として、製鉄所のコークス炉・トピードカー・高炉・熱風炉などの新築や補修・解体(築炉作業)に従事した原告E・原告D・亡F(以下「本件築炉工ら」)が、粉じん吸入によりけい肺や石綿肺などのじん肺にり患したとして、被告に対し債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償を求めた事案である。亡Fは既にじん肺死しており、その妻(後に死亡)及び子らが相続人として訴訟を承継した。 本件築炉工らは、いずれも被告以外にも複数の築炉業者(H等)の下で長期間にわたり築炉作業に従事した経歴があり、原告Eは遅くとも平成5年までにじん肺管理区分2、原告Dは平成18年頃までに同区分2、亡Fは平成8年頃にじん肺管理区分3のイ(続発性気管支炎合併症)と認定されていた。被告以外の会社であるHとの間では既に訴訟上の和解が成立しており、残る被告会社の責任の有無が本訴の争点となった。 築炉作業の中核は、窯や炉の内部に耐火れんがを積み上げる「本件積上げ作業」であり、このほか、れんがを切断・研磨する「本件加工作業」、既存のれんがを取り外す「本件取外し作業」、モルタルを練る「トロ練り」などの工程がある。じん肺は粉じんを吸入することで肺に生じる不可逆的な繊維増殖性変化を主体とする疾病で、現在の医学でも治療不可能とされている。昭和30年のけい肺特別保護法以来、じん肺法、労働安全衛生法、昭和54年の粉じん障害防止規則へと規制は段階的に強化されてきたが、築炉作業は同規則上、発じん対策として最高度の措置が要求される「特定粉じん作業」ではなく、より緩やかな「特定外粉じん作業」に分類されている。原告らは、築炉業者として予見可能性・結果回避能力を有する被告には、特定粉じん作業と同様の「3管理(作業環境管理・作業条件管理・健康管理)」を尽くす高度な安全配慮義務があったと主張した。 【争点】 争点は主に四つ。①本件築炉工らが被告に雇用された期間、②被告が負っていた安全配慮義務の内容と違反の有無、③じん肺り患と安全配慮義務違反との因果関係(民法719条1項後段の類推適用の可否を含む)、④損害額である。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。 安全配慮義務の内容については、最判昭和59年4月10日を引用し、その具体的内容は労働者の職種・労務内容・場所等の具体的状況により異なるとした上で、築炉作業は粉じん障害防止規則上の特定外粉じん作業であり、発生する粉じん量が特定粉じん作業に比して類型的に少ないこと、被告の築炉工が担当する本件積上げ作業ではれんがの破砕を伴わず粉じん発生は瞬間的・限定的であり、粉じんが多く発生する本件加工手作業や本件取外し作業も全作業の1%にも満たない短時間にとどまることを認定した。その上で、被告は、昭和34年以降建屋に開口部とシャッター窓を設け、遅くとも昭和42年以降は換気扇4台による全体換気と集じん機を用いた清掃を実施し、昭和46年頃には湿式切断機、昭和55年頃以降はトピードカー工場への集じん機・れんが解体機の設置、マスクの年次支給、じん肺教育、健康診断の実施など、法令が求める特定外粉じん作業対応措置を講じていたと認めた。平成元年のトピードカー修理現場及び平成19年のコークス炉築造現場における粉じん濃度測定結果はいずれも作業環境評価基準の第一管理区分(良好)であった。裁判所は、被告において特定粉じん作業と同視すべき危険を認識し得る状況にはなく、それ以上の措置をとる義務はなかったとして、安全配慮義務違反を否定した。 因果関係についても予備的に判断し、原告Eの被告における就労期間は合計1年3か月にとどまり、じん肺発症に必要な最低ばく露期間(通常5年から15年以上)に達しないから、仮に義務違反があっても因果関係は認められないとした。原告D(4年7か月)と亡F(8年3か月)についても、被告作業場の粉じん濃度が第一管理区分にとどまる以上、ばく露量・機会とも限定的でじん肺り患の危険性は認められないとした。さらに、民法719条1項後段の類推適用についても、被告がじん肺関連法規を概ね遵守している以上、法規を遵守しない他社(Hなど)での就労で生じたばく露について関連共同性を認める前提を欠くとして、これを排斥した。 本判決は、築炉業という特定外粉じん作業について、事業者が法令上の措置を実施していれば、たとえ労働者がじん肺にり患しても、より高度な特定粉じん作業対応措置までは要求されないとの枠組みを明確にした事例である。じん肺訴訟における使用者責任の限界を画する判断として、粉じん作業の分類ごとに安全配慮義務の水準が異なることを具体的に示した点に実務的意義がある。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。