遺族厚生年金不支給処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、亡Aの内縁の妻であると主張する原告が、厚生労働大臣に対し、遺族厚生年金の裁定及び未支給の老齢厚生年金の支給を請求したところ、原告はAの配偶者に該当しないとしていずれも不支給決定を受けたため、国を相手にその取消しを求めた事案である。 Aは昭和38年にBと婚姻し、30年以上にわたりB及び子らと家庭生活を営んでいた。その後Aは、勤務先で知り合った原告と交際を始め、平成5年頃、当時居住していた大阪府内の自宅を出て原告と京都市内で同居するようになった。別居当初、AはBに対し仕事の都合と説明していたが、後に原告との同居を告白し、その際BからAに離婚の申出がされたものの、Aがその必要はないとしたため離婚には至らなかった。以後、Aと原告は平成7年頃に購入したマンションで約22年にわたり共同生活を送り、Aは平成28年に死亡するまで戻ることなく別居を続けた。Aの死亡時、Bとの法律上の婚姻関係は存続していた。 他方、AはBとの別居後も、別居当初から死亡直前まで毎月5万円から15万円程度の生活費をBに持参ないし送金し続け、Bが居住する自宅の固定資産税も負担していた。子の結婚式や娘の夫の葬儀にも夫婦として参列し、Aが危篤となった際にはBが病院に駆けつけ、死亡までの間、複数回見舞いに訪れていた。 【争点】 厚生年金保険法37条1項、59条1項にいう「配偶者」(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)に原告が該当するか、すなわち重婚的内縁関係が存在する本件で、AとBとの法律上の婚姻関係が実体を失って形骸化し事実上の離婚状態にあったと評価できるかが争点となった。 【判旨】 大阪地裁は、重婚的内縁関係における配偶者要件該当性について、最高裁昭和58年4月14日判決等を踏まえ、原則として法律上の婚姻関係にある者が配偶者に該当し、内縁関係にある者が該当し得るのは、法律上の婚姻関係が形骸化し、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合に限られるとの判断枠組みを確認した。その判断にあたっては、別居の経緯・期間、関係修復の努力、経済的依存の状況、音信・訪問の状況、内縁関係の固定性等を総合考慮するとした。 本件について裁判所は、別居期間が22年以上に及び、夫婦関係を修復する努力が見られず、原告とAの内縁関係が安定的・固定的であったことを認めつつも、別居開始時点でAB間に既存の破綻はなく、別居は専らAと原告の交際を理由とするものであったこと、30年以上の同居期間との比較では別居期間が必ずしも長期とはいえないと評価する余地があること、AはBに対し継続的に相応の生活費を支払い、Bの生活を経済的に支えていたこと、冠婚葬祭では夫婦として振る舞い、Aの危篤・死亡時にもBが複数回見舞いに訪れたことなどから、AとBとの間にはなお夫婦として最低限の関係性が維持されていたと認定した。 以上を総合して、AとBとの法律上の婚姻関係が形骸化し事実上の離婚状態にあったとまで評価することはできないとして、原告の配偶者要件該当性を否定し、本件各不支給決定を適法とした上で、原告の請求をいずれも棄却した。