AI概要
【事案の概要】 本件は、所得税の確定申告において、ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失を事業所得等と損益通算した納税者(控訴人)が、税務署長から更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため、これらの取消しを求めた事案である。 問題となったのは、ゴルフ会員権の「取得費」の算定方法である。控訴人は、当初、B社が経営するゴルフ場の会員権(旧会員権)を550万円の登録料等を支払って取得していた。その後、B社について民事再生手続が開始され、本件再生計画に基づき、本件ゴルフ場の営業はC社に譲渡された(本件営業譲渡)。本件再生計画では、C社はB社の債務及び旧会員契約を承継せず、引き続き本件ゴルフ場の利用を希望する会員は、C社との間で新たに会員契約を締結し、C社から1口10万円の新規会員権(新会員権)の発行を受けることとされていた。ただし、継続希望会員からは改めて預託金の支払を求めず、B社とC社との間で精算金の授受を行うこととされていた(本件預託金条項)。 控訴人は、この新会員権を平成25年中に譲渡し、その際に旧会員権取得時の登録料等550万円を取得費として計上して譲渡損失を算出し、これを他の所得と損益通算して確定申告した。これに対し、税務署長は、新会員権の取得費に旧会員権の取得費用を含めることはできないとして更正処分等を行った。原審の大阪地方裁判所は控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 本件の争点は、控訴人が譲渡した新会員権の取得費として、旧会員権取得時に支払った登録料等550万円を計上できるかどうかである。控訴人は、本件再生計画の下でも旧会員契約は解除されておらず、営業譲渡により内容が変更された会員契約がC社に引き継がれているのであるから、旧会員権と新会員権との間に資産の同一性が維持されていると主張した。また、本件預託金条項によれば、C社は450万円から10万円に減額されたB社の預託金返還債務について債務引受をしていることになり、旧会員契約と新会員契約の同一性が示されていると主張した。 【判旨】 本判決は、控訴人の請求を棄却した原判決を維持し、控訴を棄却した。 本件再生計画においては、本件営業譲渡につき、C社がB社の債務及びB社と旧会員との間の会員契約を承継しないこと、旧会員のうち継続利用希望者はC社との間で新たに会員契約を締結することを要することが明記されている。また、B社及びC社は、旧会員に対し、C社が旧会員契約上の地位を承継せず、B社と旧会員との契約は効力を失う旨を案内している。したがって、本件旧会員権は本件再生計画により効力を喪失したものであり、本件新会員権は控訴人とC社との間で締結された新規会員契約により新たに発生したものと解するのが相当であって、両者の間に資産の同一性は認められない。 本件預託金条項についても、これはB社による減額後の預託金返還とC社への新規預託金支払を個別に行うのが迂遠であることから、B社とC社との間で精算する方式を採ったにすぎず(そのため「精算金」との文言が用いられている)、C社がB社の預託金返還債務を債務引受したものとは解されない。 以上によれば、控訴人がB社に支払った550万円は、あくまで旧会員権取得のための費用であって、新会員権の取得費には当たらず、更正処分等は適法である。