AI概要
【事案の概要】 本件は、いわゆる不動産サブリース取引に関する賃料増額請求事件である。原告は、平成17年1月27日、被告(不動産賃貸業等を営む株式会社で、自ら建築を請け負った建物を一括して借り上げ、個別の入居者に転貸する事業を行う業者)との間で、原告所有の建物について、賃貸期間30年、当初10年間は月額77万7800円の一括賃貸料を不変とする旨の賃貸借契約を締結した。本件建物は、原告が金融機関から融資を受けて被告に建築を請け負わせ、当該建物を被告が一括借り上げしてその賃料を原告の金融機関への返済に充てる仕組みの下で建築されたものである。 その後、被告は平成22年に巨額の営業損失を計上するなど業績が悪化し、平成23年10月15日、原告と被告との間で、賃料を月額67万6200円に減額する旨の合意(本件減額合意)が成立した。原告は、平成28年6月24日、被告に対し賃料増額の意思表示をしたうえ、借地借家法32条1項に基づき、同年7月1日以降の賃料が月額77万7800円であることの確認と、同月分から平成29年2月分までの賃料不足額合計81万2800円及び遅延損害金の支払を求めて本訴を提起した。 【争点】 本件時点(平成28年7月1日)における本件建物の相当賃料額である。具体的には、本件減額合意の際に賃料額決定の要素とされた事情は何か(原告は専ら被告の経営悪化による救済のためであって近隣賃料相場は考慮されていないと主張し、被告は近隣賃料相場を踏まえて算定したと主張)、本件減額合意後の事情変動により約定賃料が不相当になったといえるかが争われた。 【判旨】 裁判所は、サブリース契約についての借地借家法32条1項に基づく賃料増額請求の当否判断にあたっては、経済事情の変動のほか、契約当事者が賃料額決定の要素とした事情、とりわけ約定賃料額と近傍同種の建物賃料相場との関係、賃借人の転貸事業における収支予測、賃貸人の借入金返済の予定等を総合的に考慮すべきである(最判平成15年10月21日民集57巻9号1213頁参照)とした。 そのうえで、本件契約時については、原告の収支計画だけでなく近隣賃料相場等を踏まえた被告側の収益事情も相応の考慮要素となっており、30年間の賃料保証が絶対的な合意とされたとは認められないと判断した。本件減額合意についても、被告の業績悪化が大きな動機であったことは認めつつ、考慮要素はそれに限られず、近隣賃料相場その他の事情も総合的に考慮して賃料額が決定されたと認定し、原告は本件減額合意により当初の収支計画維持のリスクを一定程度引き受けたと評価した。 また、裁判所鑑定(月額64万7000円)および被告鑑定(月額66万円)のいずれを前提としても、本件時点における適正賃料額は本件減額合意の約定賃料67万6200円を下回ると認定し、被告の経営状況が本件時点で回復していることを斟酌しても、本件時点における相当賃料額は約定賃料67万6200円を上回ることはないと判断した。よって、約定賃料が借地借家法32条1項の要件を満たすほどに不相当に低くなっていたとは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した。