損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、書籍の編集著作権をめぐる紛争の控訴審である。控訴人Xは、ある書籍(以下「本件書籍」という。)について自らが編集著作者であると主張し、被控訴人である出版社(株式会社幻戯書房)が本件書籍を複製・販売する行為は、控訴人の有する編集著作権(複製権及び譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害すると主張した。控訴人は、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として、印税相当額の損害15万2000円と慰謝料200万円の合計215万2000円及び平成24年12月9日からの遅延損害金の支払を求めるとともに、著作権法115条に基づき、編集著作者としての名誉及び声望の回復措置として謝罪広告等の掲載を求めた。 本件書籍については、以前にも編集著作者の地位を争う別訴(前件訴訟)が提起されており、その確定判決(前訴確定判決)では被控訴人が編集著作者と認定されていた。前件訴訟ではAが原告となって敗訴したため、本件では控訴人自身が原告となり、Aは控訴人の代理人であったとの構成で、実質的に同様の主張を繰り返す形となった。原審(横浜地裁川崎支部)は控訴人の請求を全部棄却し、控訴人が控訴するとともに、当審で謝罪広告等を求める部分について訴えを変更した。 【争点】 争点は、控訴人が本件書籍の編集著作者に当たるか否かである。編集著作物は「素材の選択又は配列」に創作性があることで成立する(著作権法12条)。控訴人は、本件書籍の配列に創作性があることは前訴確定判決で認められていると指摘した上で、素材の選択・配列を決定した者が誰かは編集著作者の判断に関係なく、現に配列作業を行ったのは控訴人又はその代理人Aであるから、控訴人が編集著作者であると主張した。さらに、被控訴人は前件訴訟で自らが編集著作者でないと自白し、本件書籍が編集著作物であれば控訴人が編集著作者であると認めたとして、矛盾挙動禁止の法理(民訴法2条)や自白撤回禁止(同法179条)、時機に後れた攻撃防御方法などを援用した。 【判旨】 知財高裁第3部は、控訴を棄却した。編集著作物の著作者性判断において、決定権限を持たずに素材の配列に関与したにすぎない者、例えば単なる原案・参考案の作成者や参考意見を述べたにとどまる者までを編集著作者とみることは、著作者概念を過度に拡張するものであって採用できないとした。本件書籍における分類項目の設定や、選択された作品を分類項目に従って配列することを決定したのは被控訴人であり、控訴人の当審主張を踏まえてもこの認定は左右されないと判断した。また、前件訴訟で被控訴人が編集著作者でない旨を自白したり、本件書籍が編集著作物であれば控訴人が編集著作者となることを認めたりしたとの事実を裏付ける証拠はなく、控訴人の主張は前提を欠くとした。その上で、本件訴訟は前件訴訟でAが敗訴したことを受け、原告を控訴人に差し替え、Aを控訴人の代理人と位置付けて実質的に同じ主張を繰り返すものであり、前件訴訟の蒸し返しにすぎないと指摘した。結論として、控訴人が決定しAに行わせたとする事務自体、本件書籍における素材の配列について創作性を有する行為とはいえないから、控訴人は本件書籍の編集著作者とは認められず、その請求はいずれも理由がないとして、控訴を棄却した原判決を維持した。本判決は、編集著作物の著作者性判断において、現実に配列作業を担当したかではなく、選択・配列の創作的決定を行ったか否かが決め手となることを改めて示した事例として実務的意義を有する。