AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「多色ペンライト」とする特許(特許第5608827号)の特許権者である被告に対し、原告が特許無効審判を請求したものの、特許庁が請求を不成立とする審決をしたため、原告がその審決の取消しを求めた事件である。本件特許は、赤色・緑色・青色・黄色・白色の5色の発光ダイオード(LED)を個別に制御することで特定の発光色を複数生み出し、それらを集光・混色する補助手段を光源部近くに配置したうえで、発光色でカバー全体を照らすことを特徴とするペンライトに係る発明であり、コンサート会場等で用いる応援用ライトの技術分野に属する。原告は、引用発明である甲1(特開2005-235779号公報)に記載のカード型LED照明光源を用いた懐中電灯型LED照明装置に、甲2(登録実用新案第3175039号公報)に記載のRGBフルカラーLEDを用いたスティックライトの技術等を組み合わせれば、本件特許発明は容易に想到できたと主張した。これに対し特許庁は、甲1発明は光を集めて前方を照らす投光用の懐中電灯・ペンライトであって、コンサート等の雰囲気を盛り上げる道具として拡散発光させる構成とは目的を異にし、技術的事項を組み合わせる動機付けを欠くと判断し、進歩性を肯定していた。 【争点】 本件の争点は、本件特許発明が甲1発明及び甲2ないし甲4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたといえるか、すなわち進歩性(特許法29条2項)の有無である。具体的には、①甲1発明の認定の当否、②本件特許発明との一致点・相違点の認定の当否、③白色LEDと黄色LEDを含む5色のLEDを用いて混色する構成や、発光色でカバー全体を照らす構成を採用する動機付けの有無が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所第2部(森義之裁判長)は、原告の請求を棄却した。裁判所は、甲1の実施態様4に当たるペンライト(図25)にはスライド式のオン・オフスイッチしか記載されておらず、複数色のLEDを用いることや色の切替えは記載も示唆もされていないとして、原告が主張する「青・赤・黄・緑・白のLEDを備える」との構成を甲1発明に読み込むことはできないと判示した。そのうえで、甲1発明は光を集めて前方を照らす投光用の装置であるのに対し、甲2のスティックライトは発光筒体全体を発光させコンサート会場の雰囲気を盛り上げる用途のものであって、両者は用途・目的を異にし、甲1発明に甲2事項を適用する動機付けを欠き、むしろ阻害要因があるとした。また、甲12・甲13のペンライトはいずれも黄色LEDを欠き、又は黄色・白色LEDの双方を欠いており、これらを周知技術として参酌しても、白色LEDと黄色LEDを含む混色を必須とする本件特許発明の構成(相違点3)には至らないと判断した。結論として、本件特許発明1及び2はいずれも甲1発明等に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、進歩性を肯定した特許庁の審決に取消事由はないとして、原告の請求を棄却した。