収賄
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、静岡県伊東市長であった被告人が、市による土地取得をめぐって売主側から現金合計1300万円の賄賂を収受したとして収賄罪に問われた事案の控訴審である。 被告人は、伊東市長として同市議会への補正予算案の提出や市の財産取得等の職務に従事していたところ、不動産売買業等を営むB社の所有する土地を伊東市において取得するための費用を計上した補正予算案を平成27年6月定例会に提出し、同予算案可決後に同土地を購入するなどの有利かつ便宜な取り計らいをした。この謝礼の趣旨で供与されることを知りながら、平成27年8月21日頃、B社代表取締役Aから現金300万円の供与を受けた。さらに、同日、B社従業員を介し、不動産仲介業等を営むC社名義の預金口座に、架空の一般媒介契約等に基づく報酬の支払を装って合計1200万円余りを振込送金させ、同月24日頃及び同年9月3日頃の2回にわたり、C社の実質的経営者Dをして同口座から出金・持参させ、現金合計1000万円の供与を受けたものである。 原審は被告人を懲役2年の実刑に処し、これに対して弁護人は事実誤認及び量刑不当を理由に控訴した。 【争点】 争点は、第1に、被告人がAに対して有利かつ便宜な取り計らいをしたと認定できるか(事実誤認の有無)、第2に、実刑を言い渡した原判決の量刑が重きに失するか(執行猶予相当性)である。弁護人は、被告人は相場より安い価格で土地を取得しており通常かつ一般的な適法行為にすぎず、Aに利益をもたらすためにしたものではない、犯行を計画・首謀しておらず仲介業者を巻き込んでいない、1000万円は仲介業者への貸付金の返済として受領したもので実質的利益は300万円にとどまるなどと主張した。 【判旨(量刑)】 本件控訴を棄却する。 事実誤認の主張について、市のトップである被告人自らAとの交渉に当たり、補正予算案提出等の指示をして伊東市に本件土地を購入させ、資金繰りに余裕がなかったAに相応の経済的利益をもたらしたことは、有利かつ便宜な取り計らいに当たることが明らかであり、被告人もそのことを認識していたと認定した原判決に誤りはないとした。 量刑不当の主張についても、地方公共団体の首長が自ら売主側に賄賂の供与を要求したこと自体、地位を私利私欲のために悪用したものであり、同種事案と比べても高額な1300万円を収受したこと、仲介業者への貸付金のあることを奇貨として架空契約を偽装しう回させる犯行発覚防止工作を自ら計画し本来無関係の仲介業者まで巻き込んだ巧妙かつ狡猾な手口を考慮すれば、地方行政における公務の公正と社会の信頼を大きく失墜させた悪質性の強い犯行であると評価した原判決の判断を是認した。退職金全額の返納申入れ、3期12年間の市政への貢献、高齢で健康不安を抱えること、社会的制裁、控訴審で提出された伊東市民の減刑嘆願や社会福祉協議会への300万円の贖罪寄附等の事情を最大限考慮しても、執行猶予を付すべき事案とは認め難いとして、懲役2年の実刑を維持した。