道路交通法違反被告事件についてした略式命令に対する非常上告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1さ1
- 事件名
- 道路交通法違反被告事件についてした略式命令に対する非常上告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判年月日
- 2019年8月9日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 三浦守、山本庸幸、菅野博之
- 原審裁判所
- 古河簡易裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、確定した略式命令に対して検察官が提起した非常上告事件である。非常上告とは、確定判決について、その審判が法令に違反したことを発見したときに、検事総長が最高裁判所に対して申し立てる特別の救済手続であり、刑事訴訟法454条以下に規定されている。通常の上訴と異なり、法令適用の是正と法令解釈の統一を主たる目的とする制度である。 被告人は、公安委員会の牽引免許を受けないまま、平成21年10月31日午後3時頃、茨城県猿島郡境町内の道路において、重被牽引車を牽引して小型特殊自動車を運転したとして、道路交通法違反(無免許牽引)の罪に問われた。古河簡易裁判所は、平成22年4月30日、道路交通法117条の4第2号、64条、85条3項等を適用して被告人を罰金25万円に処する旨の略式命令を発付し、同命令は同年5月25日に確定した。 しかし、道路交通法85条3項は、「牽引自動車」によって重被牽引車を牽引して当該牽引自動車を運転しようとする者に牽引免許の取得を義務付けているところ、平成27年法律第40号による改正前の道路交通法75条の8の2第1項の規定によれば、小型特殊自動車はそもそも「牽引自動車」に該当しない。したがって、被告人が小型特殊自動車で重被牽引車を牽引した行為は、牽引免許を要する運転行為に当たらず、無免許牽引の罪は成立しないこととなる。 検察官は、本件略式命令の認定事実は罪とならないにもかかわらず有罪とされたものであり、法令違反かつ被告人に不利益であるとして、本件非常上告を申し立てた。 【判旨(量刑)】 最高裁判所第二小法廷は、裁判官全員一致の意見で、原略式命令を破棄し、被告人を無罪とした。 その理由として、道路交通法85条3項が牽引免許を必要とするのは「牽引自動車」による重被牽引車の牽引である一方、改正前道路交通法75条の8の2第1項によれば小型特殊自動車は牽引自動車に含まれないから、原略式命令が認定した「小型特殊自動車で重被牽引車を牽引した」行為は罪とならなかったものといわなければならない、と判示した。その上で、原略式命令は法令に違反し、かつ被告人に不利益であることが明らかであるとして、刑事訴訟法458条1号により原略式命令を破棄し、同法336条前段により被告人に無罪を言い渡した。 本判決は、略式手続において法令の適用を誤って有罪とされた被告人を、非常上告によって事後的に救済した事例である。略式命令は書面審理による簡易迅速な処理を旨とするため法令適用の誤りが看過されるおそれがあり、確定後の是正手段としての非常上告の実務的意義を示すものといえる。