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【事案の概要】 本件は、中型特殊自動車を運転して自動車専用道路(加古川バイパス)を走行していた被告人が、速度計の表示に気を取られて前方注視を怠った結果、渋滞で停止しようとしていた前方の普通乗用自動車に追突し、同車を自車と前方の大型貨物自動車との間に挟み込む形で押し出したことにより、被害車両の運転者である32歳の女性および同乗していた2歳と生後3か月の幼い子供2名の合計3名を死亡させたという、過失運転致死の事案である。被告人には、平成30年10月25日午前10時30分頃、片側2車線の自動車専用道路を時速約70キロメートルで進行するに当たり、前方左右を注視し進路の安全を確認しつつ進行すべき自動車運転上の注意義務があったにもかかわらず、これを怠って漫然と前記速度で進行した過失があり、前方約13.4メートルの地点で被害車両を認めて急制動の措置を講じたが間に合わなかった。被害者らはいずれも頭蓋骨開放性粉砕骨折の傷害を負い、その場で死亡した。被告人は本件とは別に、平成30年11月8日に神戸地方裁判所において過失運転致傷罪で禁錮1年8月、3年間執行猶予の確定裁判を受けており、本件は同確定裁判の罪と刑法45条後段の併合罪関係にあるため、まだ確定裁判を経ていない本件について更に処断されることとなった。検察官の求刑は禁錮4年であった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を禁錮3年の実刑に処した。量刑の理由として、まず、幼い子供2名を含む3名の尊い生命が一瞬にして奪われたという結果の重大性は論を待たないものであり、32歳の母親は2人の子供を育てていくという人生の充実期にあったにもかかわらず子供とともに生命を奪われ、2歳と生後3か月の子供らも本件事故がなければこれから成長し、それぞれの人生を送るはずであったと指摘し、遺族らが厳重処罰を希望するのも当然であると評価した。注意義務違反の態様は、速度計に気を取られたことによる前方注視義務違反であり、過失は軽視できるものではなく、事故態様は追突であるから被害者側に落ち度は一切なく、特に被害結果の重大性に鑑みれば被告人の責任は重いとした。他方で、運転態様が殊更危険なものではなく、無用な脇見運転をしていたともいえないことから、過失の程度が非常に重いとまではいえないこと、被告人車両には無制限の賠償責任保険が付されており金銭的賠償は適切に行われる見込みであること、被告人が当初から罪を認め、不十分とはいえ謝罪の態度を示していること、前記確定裁判と併合審理された場合との均衡も一定程度考慮すべきことといった事情を有利に斟酌した。これらの事情を総合考慮し、執行猶予を付さず禁錮3年の実刑とするのを相当と判断したものである。