AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が自らの養子及び実子である3名の子供らに対し、犬のしつけ用のスタンガンを用いて通電させるなどの暴行を繰り返し、うち長男に対しては熱傷の傷害を負わせたという暴行4件・傷害1件の事案である。被告人は、独自の教育方針の下、家庭内ルールを子供らに徹底させようと考え、数年前から日常的に、罰としてスタンガンによる電気ショックを与えていた。 本件で起訴された具体的な犯行は、平成31年2月26日から同月28日にかけて、被告人方において、当時17歳の長女、13歳の二女、11歳の長男に対し、いずれもスタンガンを押し付けて通電させる暴行を加えたというものである。長女及び二女に対しては、自らその左前腕部にスタンガンを押し付けさせた上で、被告人がリモコンを操作して通電させるという態様であった。長男に対しては、その左手背部にスタンガンを押し付けて通電させ、全治まで約7日間を要する熱傷を負わせた。これらの行為は、被告人の独善的な教育方針に基づき、日常的に繰り返されてきた虐待行為の一環として位置付けられる。 【判旨(量刑)】 裁判所は被告人を懲役2年に処した上で、4年間その刑の執行を猶予し、猶予期間中保護観察に付した。 量刑にあたり、裁判所はまず、被告人の教育方針は独善的であり、スタンガンを用いて罰を与えるという手法は常軌を逸しているといわざるを得ず、本件各犯行は日常的に繰り返された悪質な虐待行為の一環であると評価した。また、被害者である子供らは、相当程度の痛みを伴う電気ショックを日常的に受けていたものであり、身体的苦痛はもとより、精神的にも大きな恐怖を味わったことが明らかで、容易に癒えない心の傷を与えた影響は重大であると指摘した。以上から、被告人の刑事責任は重いとした。 他方で、被告人に前科がないこと、事実関係を素直に認めて反省の態度を示していること、子供らとは距離を置き二度と同種の過ちを犯さない旨約束していることなど、酌むべき事情も認められるとして、今回は刑の執行を猶予するのが相当であるとした。もっとも、被告人に適切な監督者が見当たらず、保護された子供らとの関係のあり方についても慎重な検討を要することから、社会内での処遇には専門家の指導監督が必要であるとして、猶予期間中の保護観察を付した。近年、児童虐待事案については、社会的関心の高まりを背景に処罰が厳格化される傾向にある中、本判決は、虐待の悪質性を踏まえつつも、再犯防止の実効性を確保するため保護観察を活用した事例として実務的意義を有する。