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知財

特許権侵害差止等請求控訴事件

判決データ

事件番号
平成30ネ10040
事件名
特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年8月29日
裁判官
大鷹一郎國分隆文筈井卓矢
原審裁判所
東京地方裁判所

AI概要

【事案の概要】 本件は、「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」という発明の特許権(特許第3668240号)を有する控訴人(オーストラリア法人)が、被控訴人らに対して、本件特許権の侵害を理由に、差止め・廃棄及び損害賠償として8000万円の一部請求等を求めた事案の控訴審である。 本件特許は、アルミニウム缶でワインを保存する際の品質劣化を防止することを目的とし、缶内にパッケージングするワインについて、①遊離SO₂を35ppm未満、②塩化物を300ppm未満、③スルフェートを800ppm未満とする条件を設定した上で、耐食コーティング付きツーピースアルミニウム缶に充填・シーリングする方法を特徴とするものである。ワインは酸性度が高く、金属缶との反応により味質が劣化しやすいため、従来は瓶詰が主流であったが、軽量化・耐破損性の観点からアルミ缶利用のニーズがあったという技術的背景がある。 控訴人は、被控訴人モンデ酒造がこの方法を用いて缶入りワインを製造し、被控訴人大和製罐がその専用缶を製造・販売し、被控訴人伊藤忠食品及び被控訴人セブンイレブンが当該製品を販売する行為が、本件特許権の直接侵害又は間接侵害(特許法101条4号)に当たると主張した。これに対し、被控訴人らは、本件特許にはサポート要件違反・実施可能要件違反・進歩性欠如等の無効理由があるとして、特許法104条の3の無効の抗弁を主張し、別途無効審判も請求した(特許庁は本件特許を無効とする審決をしている)。原審(東京地裁)は、本件特許はサポート要件及び実施可能要件に違反し無効にされるべきものであるとして請求をいずれも棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 最大の争点は、本件発明が特許法36条6項1号所定のサポート要件(特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えていないこと)に適合するか否かである。具体的には、本件発明が塩化物「300ppm未満」及びスルフェート「800ppm未満」という数値範囲を発明特定事項に含むところ、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識から、その数値範囲の全体にわたり「ワインの品質(味質)が保存中に著しく劣化しないようにする」という発明の課題を解決できると認識できるかが問われた。 【判旨】 知財高裁第4部(大鷹一郎裁判長)は、控訴を棄却した。裁判所はまず、所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明のサポート要件適合性は、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、当該数値範囲の全体にわたり発明の課題を解決できると認識できるか否かによって判断すべきであるとの一般論を示した。 その上で、本件発明の課題はアルミニウム缶にパッケージングしたワインの味質が保存中に著しく劣化しないようにすることであり、課題解決の確認は本件明細書の記載に照らし、味覚パネルによる官能試験の結果によらざるを得ないと認定した。ところが、本件明細書の試験結果(【0038】ないし【0042】、表1)において「許容可能なワイン品質が味覚パネルによって確認された」とされるワインについて、保存開始時の塩化物及びスルフェートの濃度の具体的開示がなく、仮に本件発明の上限値(塩化物300ppm未満、スルフェート800ppm未満)の範囲内であったとしても、上限値に近い数値であったものとは理解できない。したがって、この試験結果から、本件発明が対象とする数値範囲の全体にわたり味質が劣化しないことが確認されたとは認識できない。 加えて、本件優先日当時、ワイン中のリンゴ酸・クエン酸等の有機酸もアルミニウムの腐食原因となることが技術常識であったから、塩化物とスルフェートのみを規定しても、本件発明の課題解決ができると当業者が認識することはできない。よって本件発明はサポート要件に適合せず、控訴人がした訂正もこの無効理由を解消しないため、本件特許は無効にされるべきものであり、特許法104条の3第1項により控訴人は権利行使できないとして、請求棄却の原判決を維持した。 本判決は、数値限定発明のサポート要件審査において、明細書の実施例(官能試験結果)のみで数値範囲全体をカバーできるかを厳格に審査する姿勢を示したものとして、数値限定発明の明細書作成実務に重要な示唆を与えるものである。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。