AI概要
【事案の概要】 本件は、60歳代の主婦である原告が、被告らから「地盤強化工法」および「ナビゲーション装置」に関する特許権の共有持分を購入すれば近日中に大幅に価値が上がる等と勧誘され、特許権持分の購入代金名下に多額の金員を支払わされたとして、共同不法行為および会社法429条1項に基づき、合計9032万円の損害賠償を請求した事案である。 特許権者である被告P5と被告日本知財開発は、本件地盤特許(2万分の1持分を1口60万円)および本件ナビ特許(10万分の1持分を1口20万円)を細分化し、被告日本知財開発を管理委託機関として、販売代理店であるリーフ、被告ecoリーフ、その下請けのはなみずき等を介して一般消費者に販売する枠組みを構築していた。そして被告ジンムが両特許について専用実施権者として設定されていた。 原告は、平成25年1月から平成29年3月までの約4年間にわたり、はなみずきのP9やリーフのP10らから、「鹿島建設に対する特許侵害訴訟に勝訴すれば持分の価値が2、3倍になる」「本件ナビ特許は米国大手IT企業(グーグル)に1億ドル以上で売れる」「平成30年2月には購入した半額が必ず戻ってくる」等と次々と勧誘を受け、13回にわたって持分を購入し、合計8295万円を現金で支払った。しかし本件地盤特許は平成28年に無効が確定して登録が抹消され、侵害訴訟も請求棄却で確定、原告はロイヤリティや配当を一切受け取れず、後に3口分として返還された63万円以外の金員は回収できなかった。 【争点】 被告らの原告に対する共同不法行為および会社法429条1項の責任の成否、ならびに原告の損害額である。被告日本知財開発らは、販売は代理店が独立に行ったものであり自社は管理委託機関にすぎないと反論し、被告ecoリーフ・被告P4は自社在籍中のP3が会社を利用して独自に行ったものと主張、被告P6・被告P7・被告P8は名目上の代表取締役・取締役にすぎず業務内容を知らなかったと主張した。 【判旨】 大阪地裁は、原告の請求を9032万円の限度で認容した。原告購入時点で本件各特許権の残存期間はごくわずかで、ライセンス料獲得の具体的見込みもなく、持分評価を裏付ける客観的資料は皆無であったにもかかわらず、販売担当者らが侵害訴訟勝訴や大手企業との契約を断言した説明は、原告から金員を引き出すことのみを目的とした虚偽のものであったと認定した。 そして、特許権を細分化して高額で譲渡する基本的枠組みは被告P5・被告日本知財開発・被告ジンムの関与なしには成立せず、販売担当者らは同被告らが定めた枠組みおよび被告P5作成・被告日本知財開発配布の報告書に沿って勧誘しており、同被告らは虚偽説明による詐取を認識していたと認定。本件地盤特許の販売と本件ナビ特許の販売は、訴訟不調を契機とする振替えを挟んで一連の行為として行われており、分断できないとして、被告P5、被告日本知財開発、被告ジンム、被告ecoリーフおよび関連販売会社について共同不法行為責任を肯定した。 代表取締役・取締役らについては、実質経営者が別にいても、また名目上の役員であっても、代表取締役の業務執行を監視・監督する義務を負うにもかかわらず漫然と放置しており、任務懈怠について少なくとも重過失が認められるとして、会社法429条1項の責任を肯定した。なお、同項の責任は不法行為の性質を有しないため遅延損害金は訴状送達の翌日から発生すると判示し、共同不法行為責任と会社法429条1項責任は不真正連帯債務の関係に立つと整理した。 本判決は、特許権の共有持分を細分化して投資商品として販売する手法について、特許権者・管理機関・販売代理店が一体となった詐欺的商法と評価し、関与した会社および役員らに幅広く責任を認めた点で、特許権販売商法に対する司法の厳格な姿勢を示した事例として実務的意義を有する。