AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「情報管理方法、情報管理装置及び情報管理プログラム」とする特許第5075201号(本件特許)を有する原告(株式会社コムスクエア)が、被告(株式会社T)が本件特許の技術的範囲に属するプログラム(被告プログラム)を使用したサービス「Callクレヨン」を顧客に提供し、本件特許権を侵害しているとして、被告に対し、特許法100条1項に基づく被告プログラムの譲渡等の差止め及び民法709条に基づく損害賠償を求めた事案である。 本件発明は、ウェブ広告の一方式であるペイ・パー・コール方式に関するものであり、広告ごとに異なる電話番号を動的に割り当て、一定期間の経過等を基準としてその提供を終了することで電話番号の再利用を可能とし、電話番号資源の有効活用と枯渇防止を図る情報管理プログラムである。被告プログラムは、不動産情報サイト「アットホーム」等において、閲覧ユーザが「電話」ボタンを押すと10分間有効のワンタイム電話番号が表示され、不動産業者に接続される仕組みを実現するものであった。 【争点】 争点は、(1)被告プログラムにおける架電番号が「架電先の電話器を識別する識別情報」に当たるか(構成要件充足性)、(2)被告プログラムが架電番号を「送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させる機能」を有するか、(3)本件発明が先行特許(乙5発明)により無効となるか、(4)損害額(特許法102条2項の利益算定と寄与度)である。 【判旨】 東京地裁は、原告の請求を一部認容した。まず構成要件充足性については、被告プログラムにおいて、未架電の端末に特定の物件の連絡先として架電番号が表示されると、当該番号と架電先が関連付けられ架電先を識別する情報として機能していると認定し、架電後に発信者番号との組合せで識別されることになるとしても結論を左右しないとして、構成要件①を充足すると判断した。 次に「送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させる機能」については、被告が主張する「番号が再利用される可能性がなくなる場合」に限るとの解釈は明細書の記載と整合しないとして排斥し、発行後に架電がなく所定時間が経過した番号(状態②)は端末画面に表示され得ない状態にあるから送出不可能な状態で管理されているとして、構成要件③及び⑥を充足すると判断した。 無効理由については、先行発明(乙5発明)はLRUアルゴリズム(最長未使用電話番号から割当てを解除する方式)を採用しており、本件発明の「識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合」という構成を備えていない点で相違し、また割当解除と同時に新たな割当てが行われるため「送出不可能な状態」への変化も存在しないとして、新規性・進歩性の欠如を否定した。 損害額については、特許法102条2項の「利益」とは売上高から製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益であるとした上で、被告が主張する通信回線利用料・派遣労働者費用・専用プログラム開発費は被告の他のサービスにも費消されるもので直接関連性を欠くとして控除を否定した。推定覆滅事由についても、被告サービスの訴求ポイントである動的な電話番号発行は本件発明の効果を発揮する上で不可欠な要素であり、独自技術(PhoneCookie)の売上貢献を示す具体的証拠もないとして、寄与率0%との被告主張を退けた。以上により、被告プログラムの使用差止めと、計算鑑定に基づく限界利益額に弁護士費用相当額10%を加算した損害賠償の支払を命じた。 本判決は、ペイ・パー・コール方式のウェブ広告における電話番号管理プログラムについて、ワンタイム番号が表示された時点での「架電先との関連付け」を識別情報の該当性の判断基準とした点、及び「送出不可能な状態」の解釈について明細書の実施例(関連付け解除期間T4)を参酌して被告の限定解釈を排斥した点に実務的意義があり、また、特許法102条2項の利益算定における経費控除の基準として「侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費」に限定した知財高裁令和元年6月7日判決を踏襲した事例としても参考となる。