AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成31年4月7日施行の大阪市議会議員選挙においてa区選挙区から立候補した者である。本件は、被告人が自己の当選を得る目的で、選挙運動者に対し現金を供与したとして、公職選挙法違反(買収)に問われた事案である。 具体的には、被告人は平成30年10月頃、Aに対し、翌年施行の大阪市議選での選挙運動期間中における車上運動員(いわゆる「うぐいす嬢」)の派遣をBに要請するよう依頼した。その後Aから、車上運動員の報酬が1人1日当たり2万1000円×4人×9日間といった、法定上限額(1人1日1万5000円)を超える金額を記載した見積書が送付され、被告人はこれを確認の上、合計75万6000円をA名義の口座に振込送金した。 Aは、Bの仲介でうぐいす嬢計4名を手配するなどの選挙運動を行い、その対価として被告人からA名義口座に入金された75万6000円のうち、3万6000円がAに供与され、残る72万円はAからB名義口座へ振り込まれた(判示第2については被告人とAの共謀)。被告人は公訴事実を争い、Aは選挙運動者ではなく選挙コンサルタント業者であって報酬支払は適法であるなどと主張した。 【争点】 争点は、(1)Aへの金銭供与が選挙運動者に対する違法な買収行為に当たるか、(2)仮に買収に当たるとしても被告人に買収の故意が認められるか、(3)被告人とAとの間で、Bに対する買収についての共謀および故意が認められるか、の3点である。 【判旨(量刑)】 裁判所はいずれの争点についても検察官の主張を容れ、被告人を懲役1年、5年間執行猶予に処した。 (1)については、選挙運動とは特定候補者のための投票獲得を目的とした周旋・勧誘等をいうところ、Aは車上運動員の手配および運動員への投票呼びかけ等の指示を行っており、これは選挙運動に当たると認定。被告人の「Aは選挙コンサルタント業者であり報酬支払は適法」との主張については、コンサルティング契約の内容や対価が具体的に定まっていたとの裏付けがなく不合理であり、コンサルタントを名乗るだけで活動が選挙運動でなくなるものではないとして排斥した。 (2)については、見積書の記載内容からして被告人が報酬上限超過分の存在を認識していたことは明らかであり、違法性の判断を誤ったにすぎない旨の弁解は故意の有無に影響しないと判示した。 (3)については、被告人の当初の依頼内容や届出書作成の経緯からみて、送金額のうち相当額がAを介してBに渡ることについて被告人に少なくとも未必的認識があったとして、共謀および故意を認定した。 量刑については、供与額が小さくなく、公職候補者自らが買収に及んだ点で悪質であり、選挙の公正を害する責任は重いと評価。不合理な弁解に終始し反省も見られないこと、共犯者との刑の均衡から懲役刑を選択したが、前科前歴がないこと等を踏まえ執行猶予を付した。公民権停止期間について特別な配慮はしないものとされた。