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下級裁

殺人被告事件

判決データ

事件番号
平成31う239
事件名
殺人被告事件
裁判所
大阪高等裁判所
裁判年月日
2019年9月11日
裁判種別・結果
棄却
裁判官
森岡孝介加藤陽

AI概要

【事案の概要】 本件は、被告人が自動車専用道路において、自身の運転車両で二輪の被害車両を追跡し、後方から自車を衝突させて被害者を転倒・死亡させたとして、殺人罪に問われた事案の控訴審判決である。事案の経緯は次のとおりである。被告人は、片側2車線の道路を走行中、前車を追い抜こうとした被害車両との間で車線変更をめぐるやりとりがあり、その後片側3車線となった区間において、被害車両が被告人車両の前方に進入したことに腹を立てた。被告人は、先行する被害車両に対しハイビームを照射し、クラクションを繰り返し鳴らして威嚇した。これに対し被害車両は急加速して離れ、第3車線に車線変更したが、被告人も被告人車両を加速させてこれを追跡し、第3車線に入って被害車両の後方に接近、時速約103ないし110キロメートルの高速で約5秒間走行した。そして車間距離が約10メートルとなった地点で被告人はブレーキを掛けたが、そのブレーキは約1.4秒間で時速約12キロメートル減速する程度の弱いものにとどまり、被告人車両前部が被害車両後部に衝突した。被害者は被害車両もろとも転倒し、ガードロープ支柱等に激突して頭蓋骨・顔面骨粉砕骨折等の傷害を負い、多発性脳挫傷により死亡した。衝突後、被告人は停車の頃に軽い口調で「はい、終わり。」と発言している。原審の神戸地裁は、被告人に殺人の未必の故意があったと認めて懲役16年を言い渡した。弁護人はこれを不服とし、事実誤認、法令適用の誤り及び量刑不当を主張して控訴した。 【争点】 主たる争点は、被告人に殺人の未必の故意があったと認められるかである。弁護人は、被告人は被害車両を追跡する意図はなく、またその行方を見失っていたから追跡の認識もなかった、第3車線での加速は自車挙動を整えるためで車間距離を意図的に詰めたのではない、衝突直前に減速したのは衝突回避のためであり発見遅れによるとっさの判断ミスにすぎない、「はい、終わり。」との発言も衝突事故を起こして仕事ができなくなるとの落胆を示したもので衝突の認容を推認させるものではない、などと主張した。あわせて、動機の希薄さや事故後の救命措置意思など、故意の推認を妨げる事情の評価も争われた。量刑面では、未必の故意で計画性がなく被害者も1名であること、被害車両の運転方法にも危険性があったこと、自賠責保険による被害填補の評価などが問題とされた。 【判旨(量刑)】 大阪高裁は、控訴を棄却した。まず故意について、被告人車両及び目撃車両のドライブレコーダー映像、その解析に基づく捜査報告書等を総合すれば、被告人が怒りにかられて被害車両を追跡し、約45メートル先の被害車両を認識しつつ高速度で接近したこと、時速80キロメートル程度まで減速すれば衝突を回避できたにもかかわらず弱いブレーキしか掛けなかったこと、車間距離を詰める際にはそれまでのような威嚇行動に出ていないこと、衝突後の「はい、終わり。」との発言が衝突を想定内の事態として語ったものと解されることなどから、被告人には被害車両と衝突し被害者が死亡してもかまわないという認識認容、すなわち殺人の未必の故意があったとした原判決の認定に、論理則・経験則に照らして不合理な点はないと判断した。弁護人の主張する追跡意思の欠如や発見遅れによる判断ミスは、原審公判での被告人供述とも整合せず、ドライブレコーダーの映像・音声からも焦りや狼狽の形跡が認められないとして排斥した。動機に関しても、本件で認定されたのは意欲的・積極的な殺意ではなく瞬間的な未必の故意であるから、明確な殺害動機の不存在や事後の救命行動は故意認定と矛盾しないとした。量刑については、客観的には被害者の死亡をもたらす確実性の高い危険な犯行であり、些細なことから一方的に怒りを増幅させて後方から追突するという動機に酌量の余地はなく、被害者には何らの落ち度もない一方、殺意は瞬間的で強固ではないとの原判決の評価は概ね正当であるとした。未必の故意・計画性の不存在・被害者1名という点も原判決は前提として考慮しており、不当な軽視はない。自賠責保険金の支払見込みについては、殺人という生命侵害の犯罪では被害弁償による法益回復を観念し難く、かつ自賠責は加入が義務付けられた保険で被告人自身の誠意の表れと同視できないから、量刑を特に減ずる積極的事情とは評価し難いと説示し、原審後に遺族が自賠責保険金3000万円を受領した点を考慮しても結論は左右されないとして、懲役16年の量刑を維持した。本判決は、交通場面における「あおり運転」型の衝突事故について、未必の故意による殺人罪の成立を正面から認めた事例として実務上の意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。