特許権侵害行為差止等請求控訴,同附帯控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、家庭用ゲーム機向けソフトウェア等を業とする控訴人(カプコン)が、同業の被控訴人(コーエーテクモゲームス)に対し、被控訴人の製造販売する複数のゲームソフトが控訴人の保有する2件の特許権を侵害したとして、不法行為に基づく損害賠償として約9億8323万円の支払を求めた事案の控訴審である。問題となった特許は、①発明の名称「システム作動方法」(本件特許A)と、②発明の名称「遊戯装置、およびその制御方法」(本件特許B)の2件である。本件特許Aは、ゲームプログラムを記録したディスク等の記憶媒体を本編ディスクと拡張ディスクに分け、本編ディスクを「所定のキー」として読み込ませると、拡張ディスク単独では遊べない追加キャラクター・シナリオ等が解放されるという、いわゆるシリーズものゲームでキャラクター等を継承して遊ばせる技術に関するものである。被控訴人はこれと同種のMIXJOY機能を「真・三國無双」「戦国無双」「遙かなる時空の中で」各シリーズに搭載していた。本件特許Bは、プレイヤーキャラクターの置かれている状況(敵との距離等)が画面からは見えない場合に、振動の間欠周期を状況に応じて変化させる体感振動技術に関するもので、被控訴人の「零」シリーズにおける、画面に映らない霊との距離をコントローラーの振動で感じ取らせる機能がこれに該当するとされた。原判決(大阪地裁)は、本件特許Aについては新規性欠如を理由に請求を棄却したが、その後の特許無効審判における訂正が審決取消訴訟を経て確定した結果、無効理由は解消し、控訴審では侵害の成否が改めて審理された。 【争点】 争点は多岐にわたるが、中心となったのは、①イ号・ロ号各製品が各発明の技術的範囲に属するか(特に文言侵害および間接侵害〔特許法101条1号・4号〕の成否)、②各特許が無効審判により無効とされるべきか(旧ゲーム機システムや「ぎゅわんぶらあ自己中心派」シリーズ、「ニンジャウォーリアーズ」等の公知発明による新規性・進歩性欠如の有無)、③実施料相当額としての損害額(特許法102条3項)をどう算定するかである。 【判旨】 知財高裁は、本件特許Aにつき、「セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く」との訂正を経た本件発明A1・A2はいずれの公知発明からも容易に想到できず無効理由はないと判断し、イ号各製品のうちMIXJOY機能を備える「イ-9号製品等」は本件発明A1の技術的範囲に属し、同製品の製造販売が本件特許権Aの間接侵害(特許法101条4号)を構成すると認めた。本件特許Bについても、公知の戦車ゲーム(ニンジャウォーリアーズ)や既存のゲーム振動技術は、画面から認識できる情報に対応する振動にすぎず、「画像情報からは認識できない情報」を「間欠周期を異ならせる」体感振動として送出する本件発明B1とは決定的に異なるとして進歩性を肯定し、ロ号製品(零シリーズ等)の製造販売が間接侵害(特許法101条1号)に当たるとした。損害額については、ゲーム分野のロイヤルティ料率平均(2.5%前後)、特許発明の代替技術の不存在、両者が競業関係にあることを踏まえつつ、他方で侵害品の売上げにはキャラクター・世界観・シリーズのブランド力といった特許技術以外の訴求要素の貢献が大きいことなども総合し、本件特許Aについて実施料率3.0%、本件特許Bについて同1.5%と認定。弁護士・弁理士費用相当額を含めて総額1億4384万3710円及び遅延損害金の支払を命じ、原判決を変更した。なお、被控訴人の附帯控訴は棄却されている。特許法102条3項に基づく実施料相当額の認定において、ゲームソフトという複合的コンテンツにおける特許技術の寄与度をどう織り込むかを丁寧に検討した点に、エンタメ分野での特許権侵害事件における算定の枠組みを示す先例的意義がある。