AI概要
【事案の概要】 原告(シーティービーエイティー・インターナショナル・リミテッド。以下「BAT系企業」)は、平成28年11月に、紙巻たばこや電子たばこなどを指定商品とする商標(以下「本願商標」)について商標登録出願をした。本願商標は、濃紺の縦長長方形を地として、上部中央に茶色の「SIGNATURE」の欧文字を横書きし、中央部には「NO.」「555」「STATE EXPRESS」の三段表記を含む円形図案と、王冠やライオン風の仮想動物、「SEMPER FIDELIS」のリボン等からなる紋章風の図形を配した結合商標である。 特許庁は、先行登録である「SIGNATURE」の標準文字商標(登録第4658792号。指定商品「たばこ」。以下「引用商標」)との関係で、本願商標中の「SIGNATURE」部分を要部として抽出でき、引用商標と称呼・観念・外観が共通して類似するとして、商標法4条1項11号に該当するとの理由で拒絶査定をした。原告が不服審判を請求したものの、特許庁は平成30年10月5日に請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めて知財高裁に提訴した。 原告は、本願商標の中心的な識別標識はあくまで「No.555 STATE EXPRESS」を含む図柄部分であり、「SIGNATURE」は「特徴的な」「特製の」といった記述的意味を有する識別力の弱い語にすぎず、たばこ業界ではサブブランドや品質表示として用いられているに過ぎないと主張し、分離観察は許されないと争った。 【争点】 結合商標である本願商標から「SIGNATURE」部分を要部として分離抽出し、これと引用商標を対比して類否を判断することが許されるかどうか、具体的には、①「SIGNATURE」の文字が外観上どの程度目立つか、②「No.555 STATE EXPRESS」ブランドの日本における周知性の程度、③「SIGNATURE」の語が記述的・非識別的な意味で理解されるか、④たばこパッケージの「第2表示」に関する取引の実情が、分離観察を否定する方向に働くかが主要な争点となった。 【判旨】 裁判所は、最高裁昭和43年2月27日判決および同38年12月5日判決が示す結合商標の類否判断基準を踏まえ、本願商標は分離観察が可能であり、引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却した。 まず外観について、「SIGNATURE」の文字は本願素地の最上部中央に配置され、図柄部分との間に素地縦の約15パーセントに相当する間隔が空いていること、その高さは「555」の約半分ながら相応の大きさがあることから、図柄部分と一体のものとは認識できず、相応に目立つ態様で表示されていると認定した。 次に、「No.555 STATE EXPRESS」ブランドについては、日本国内で同ブランドのたばこが販売されていないこと、スバルのWRCチームへのスポンサー活動は平成15年に終了し審決時までに約15年が経過していること、F1での宣伝広告効果も限定的であることから、日本における同ブランドの認知度は相当に低いと判断した。 さらに、「SIGNATURE」の意味については、我が国では「署名、サイン」以外の意味が一般的に知られているとは認められず、「シグネチャーブランド」「特徴的な銘柄」などの記述的意味で理解されるとは認められないと認定した。たばこのパッケージに付される「第2表示」も、「CABIN RED」「CASTER WHITE」のように商品の性質を示さず独立した識別標識として機能するものが存在するから、第2表示が常に品質表示にとどまるとの原告主張は採用できないとした。加えて、引用商標権者が「GUDANG GARAM」ブランドのサブブランドとして「Signature」を用いているのも、出所識別標識としての使用であると評価した。 以上から、本願商標に接した需要者は「SIGNATURE」を図柄部分から独立した要部として認識するのであって、これを抽出して引用商標と対比することは許され、両者は外観・称呼・観念において共通するから類似するとして、商標法4条1項11号該当性を認めた審決を維持した。本判決は、たばこのパッケージに配されるサブブランド的文字列であっても、図柄部分との配置・大きさ・独立性によっては要部抽出が可能であることを示した実務上の先例として意義を有する。