著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、音楽著作物の著作権等を管理する一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC、被控訴人)が、静岡市内のライブバー「Music Lounge SUQSUQ」等を経営していた控訴人らに対し、利用許諾契約を締結しないまま管理著作物を演奏等に使用したのは演奏権・上映権の侵害に当たるとして、差止めおよび損害賠償等を求めた事案の控訴審である。 対象となった店舗は、旧SUQSUQ(平成20年6月から平成27年1月まで控訴人Xが実質的経営)、PARADISE(平成27年7月から同年11月まで同じく控訴人Xが実質的経営、名義上は合同会社アーク)、現SUQSUQ(平成27年12月以降、控訴人らが共同経営)の3店舗である。各店では、控訴人Xらが参加する「しんちゃんバンド」による楽器演奏、従業員や客による歌唱、カラオケ機器を用いた伴奏による客の歌唱などが行われていたが、いずれについてもJASRACと利用許諾契約は結ばれていなかった。原判決は控訴人らの責任を認めて差止めと一部の損害賠償を認容し、控訴人らが控訴、被控訴人が請求額を拡張して附帯控訴した。 【争点】 主たる争点は、〈1〉控訴人Xおよび控訴人Yが各店舗における管理著作物の利用主体(侵害主体)に当たるか、〈2〉非営利・無料・無報酬の演奏として著作権法38条1項により演奏権が及ばない場合に該当するか、〈3〉JASRAC使用料規程に基づく使用料相当額の算定の妥当性、〈4〉口頭弁論終結後の将来分の損害賠償の訴えの適法性である。控訴人らは、セット料金は飲食代金そのものであり、バンド演奏は素人スタッフによる無償サービスにすぎず、使用料規程は憲法の表現の自由や幸福追求権を過度に制約し公序良俗に反するなどと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴人Xが各店の実質的経営者として、控訴人Yが現SUQSUQの共同経営者として、それぞれ管理著作物の利用主体に当たると認めた。著作権法38条1項の「非営利目的」とは、利用行為が直接的にも間接的にも営利に結びつかないことをいうと解した上で、バンド演奏は飲食店の集客に寄与しており、控訴人ら自身も客寄せのための演奏と自認していることから、間接的に営利に結びつくものであり、同条項による適用除外には当たらないと判断した。使用料規程については、座席数や標準単位料金の算定方法が具体的に定められ、著作物利用許諾契約の性質上合理性があるとして、控訴人らの違憲・無効の主張を排斥した。そのうえで、各店舗の座席数を31〜40席と認定し、1日平均の演奏曲数(生演奏20曲、カラオケ5曲)、月平均営業日数20日、各侵害期間を認定して使用料相当額を算定し、これに弁護士費用1割を加算した金額の賠償を認めた。他方、控訴審口頭弁論終結後の令和元年7月9日以降の将来分の損害賠償請求については、継続的不法行為に係る損害額をあらかじめ一義的に認定できないとして、最高裁昭和56年12月16日大法廷判決等を引用のうえ、訴えを却下した。本判決は、ライブバー等の店舗における生演奏やカラオケ利用をめぐる侵害主体の認定、38条1項の「間接的営利性」の判断枠組み、JASRAC使用料規程の合理性、そして将来給付の訴えの適格に関する実務的指針を示したものである。