AI概要
【事案の概要】 本件は、商標「アンドホーム」(第37類「建築工事に関する助言」「建築物の施工管理」「建築設備の運転・点検・整備」等を指定役務とする)の商標権者である原告が、被告の請求によって同商標の登録を取り消した特許庁の審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 商標法50条は、継続して3年以上日本国内において商標権者等が指定商品・役務について登録商標を使用していない場合、何人も不使用取消審判を請求できると定める。本件では、被告が平成29年6月に不使用取消審判を請求し、特許庁は、要証期間(平成26年6月22日から平成29年6月21日)内に商標権者等による使用が立証されていないとして取消審決をした。 原告は、通常使用権者Kが要証期間内の平成28年1月から同年6月頃まで「アンドホーム」の名称で建築事業を行い、注文者との打合せにおいて「アンドホーム資金計画表」と標題を付した資金計画表や工事請負契約書を作成・交付したことなどをもって、本件商標を使用していたと主張した。これに対し被告は、原告提出の書証はマスキングされ写しが原本として提出されるなどしており信用性がない、Kは着工時には既に「シンプルハウス」へ屋号変更していた、名目的使用にすぎない等と争った。 【争点】 (1) 原告提出の各書証(工事請負契約書、資金計画表、名刺、保証書等)の成立の真正及び信用性。 (2) Kが本件商標を「建築工事に関する助言」等の取消対象役務について使用したと認められるか(商標法2条3項3号・4号該当性)。 (3) 建築確認申請後に屋号を「シンプルハウス」に変更したことや、使用期間が約半年にとどまる点から、Kによる使用が名目的使用にすぎないとして不使用取消を免れさせる「使用」に当たらないといえるか。 【判旨】 知財高裁は、審決を取り消した。まず、工事請負契約1に係る確認済証・建築計画概要書(公的機関保管文書)により、平成28年6月9日以前は「アンドホーム」名義で建築確認申請がなされ、同月15日に「株式会社シンプルハウス」へ変更されたことが裏付けられ、Kの供述の核心部分は信用できると判断した。各資金計画表・工事請負契約書・名刺・保証書等についても、Kの供述・注文者の陳述書・公的書類と整合し成立の真正及び信用性が認められるとした。 次に、商標法施行規則別表にいう「建築工事に関する助言」は、工事業者に対する施工手順等の助言に限らず、施工主たる注文者に対する助言も含むと解し、Kが注文者と複数回の打合せを重ねて建物のデザイン・設計・資金計画について要望を反映させた行為はこれに該当するとした。そして、「アンドホーム資金計画表」との標題は「アンドホーム」標章を付す行為と同等と評価でき、これを注文者に交付して役務提供に用いた行為は商標法2条3項3号・4号に該当するとした。 着工時点では屋号が「シンプルハウス」に変わっていた点については、問題とすべき役務提供(助言行為)は本件資金計画表を用いた打合せ時点(平成28年3月2日頃から5月29日頃)であり屋号変更前であること、当該時点で「アンドホーム」に対する業務上の信用は既に発生していることから、使用該当性を否定する理由にならないと判示した。また、被告からの警告は使用時期より相当遅い時期であり、使用態様に照らしても名目的使用とはいえないとした。以上により、要証期間内に通常使用権者Kが「建築工事に関する助言」につき本件商標を使用したと認め、審決を取り消した。