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【事案の概要】 原告は「アンドホーム」という標準文字の登録商標(第5639879号、指定役務に「建築物の設計」「デザインの考案」等を含む)の商標権者である。被告は、当該商標が継続して3年以上日本国内において商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれによっても指定役務について使用されていないとして、商標法50条1項に基づき、第42類「建築物の設計、デザインの考案」についての商標登録取消審判を請求した。 特許庁は、原告の被告に対する使用許諾は認められず、また、原告が通常使用権者と主張するK(建設会社従業員を辞めて独立し、平成28年1月頃から「アンドホーム」の名称で建物の設計・建築事業を開始し、同年6月9日に「株式会社シンプルハウス」を設立して屋号を変更した人物)についても、取消対象役務について本件商標を使用したとは認められないとして、当該指定役務に関する登録を取り消す旨の審決をした。これに対し原告が審決取消訴訟を提起したのが本件である。 【争点】 通常使用権者Kが、要証期間(平成26年6月22日から平成29年6月21日まで)内に、取消対象役務である「建築物の設計」について本件商標を使用したと認められるか(取消事由2)。特に、Kが自らは建築士事務所登録をしておらず、建築図面の作成を他の設計士に外注していた点、および注文者に交付された工事請負契約書・資金計画表等が商標法2条3項各号所定の「使用」に該当するかが問題となった。 【判旨】 知財高裁は審決を取り消した。 裁判所はまず、原本および写しとして提出された工事請負契約書、資金計画表、建築図面、確認済証、名刺、保証書、注文者陳述書等について、行政官庁保管文書である確認済証等との整合性、Kの証言内容との一致、契約金額の計算が資金計画表の数値と合致すること等を根拠に、その成立の真正および信用性を肯定した。 その上で、Kが注文者2名との間で「アンドホーム」名義の工事請負契約(平成28年4月7日付けおよび同月24日付け)を締結し、建築図面自体はKがラフ図を描いた上で別の設計士に外注して作成したものの、Kが注文者から「建築物の設計」を含む工事に関する役務を一括して請け負っていたと認定した。外注による図面作成はKが注文者から請け負った債務の履行であるから、Kは「建築物の設計」の役務を提供したと評価できる。 さらに、工事請負契約書は「建築物の設計」を含む役務に関する「取引書類」に該当し、Kが本件商標を付した契約書を注文者に交付した行為は、商標法2条3項8号所定の使用(取引書類に標章を付して頒布する行為)に当たる。契約締結後にKが屋号を「シンプルハウス」へ変更した点についても、契約書交付時点で「アンドホーム」標章に対する業務上の信用が発生している以上、その後の屋号変更によって当該信用が直ちに保護に値しなくなるものではないとした。名目的使用との被告の主張も、不使用取消をほのめかす被告からの連絡がKの使用時期から相当後の平成29年3月であったこと等から排斥した。 以上により、通常使用権者Kが要証期間内に取消対象役務「建築物の設計」について本件商標を使用した(商標法50条2項)と認め、審決を取り消した。工務店が設計を外注するケースにおいて、契約書への標章表示を商標法2条3項8号の「使用」と認めた実務的意義のある判断である。