AI概要
【事案の概要】 本件は、商標「アンドホーム」(標準文字)を保有する原告(商標権者)が、被告からの不使用取消審判請求により指定役務の一部の登録が取り消された審決の取消しを求めた事案である。 本件商標は、第37類(建設工事、建築工事に関する助言等)及び第42類(建築物の設計、測量、地質の調査、デザインの考案、建築又は都市計画に関する研究)を指定役務として平成25年12月に設定登録された。被告は、第42類のうち「測量、地質の調査、建築又は都市計画に関する研究」について不使用を理由とする取消審判を請求し、特許庁は、平成31年2月、要証期間(平成26年7月3日から平成29年7月2日まで)内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消対象役務について本件商標を使用したと認められないとして、当該役務についての登録取消しを命ずる審決をした。 原告は、第三者であるKが原告から本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者であり、Kが「アンドホーム」の名称で注文者らと工事請負契約を締結し、下請業者である東昇技建株式会社に地盤調査を依頼するなどして、要証期間内に取消対象役務のうち「地質の調査」について本件商標を使用したと主張し、審決の取消しを求めた。これに対し被告は、原告提出の契約書、資金計画表、建築図面等の書証の成立の真正及び信用性を争い、またKが本件商標を取消対象役務について使用したものではないなどと反論した。 【争点】 争点は、(1)原告の被告に対する本件商標の使用許諾の有無(取消事由1)、(2)通常使用権者Kが要証期間内に取消対象役務(とりわけ「地質の調査」)について本件商標を使用したと認められるか(取消事由2)であり、特に(2)については、Kが注文者に交付した「アンドホーム資金計画表」が商標法2条3項8号にいう役務に関する「取引書類」に当たるか、Kが下請業者を通じて行わせた地盤調査をK自身の役務提供と評価できるかが問題となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、取消事由2について原告の主張を認め、審決を取り消した。 裁判所は、まず各書証の成立の真正及び信用性を検討し、行政官庁に保管されていた確認済証及び建築計画概要書の記載(平成28年6月9日時点で営業所名が「アンドホーム」と記載され、同月15日に「株式会社シンプルハウス」への変更届が提出されたこと)により、Kが同日以前は「アンドホーム」名義で事業を行っていたというKの供述の核心部分が裏付けられるとし、工事請負契約書、資金計画表、建築図面、保証書、地盤調査報告書、注文者の陳述書のいずれも信用できるとした。 その上で裁判所は、Kが「アンドホーム」の名称で2件の工事請負契約を締結し、資金計画表の「地盤改良工事費用」欄に地盤調査の結果により費用が変動する旨記載し、当該費用を含む建築費用合計代金の全額をKに支払わせていたことなどに照らし、Kは工事請負契約の締結とともに地盤調査を含む役務を一括して請け負ったものと認定した。したがって、下請業者の東昇技建が実施した地盤調査も、注文者との関係ではKが請け負った債務の履行として行われたものであり、Kが「地質の調査」を提供したと評価できるとした。 そして「アンドホーム資金計画表」は、Kが提供する地盤調査を含む役務に対応して作成された見積書としての書面であり、当該役務に関する「取引書類」に当たるから、Kがこれに「アンドホーム」の標章を付して平成28年3月2日頃から同年5月29日頃にかけて注文者に交付した行為は、商標法2条3項8号所定の使用に該当すると判示した。 また被告の「名目的な使用」との主張については、被告から原告への不使用取消を示唆する連絡が平成29年3月であって使用時期より相当遅いことや、実際の使用態様に照らし、名目的な使用とは認められないとして排斥した。 以上により、通常使用権者Kが要証期間内に日本国内において取消対象役務のひとつである「地質の調査」について本件商標を使用したと認められるから(商標法50条2項)、取消事由2には理由があり、その余の取消事由について判断するまでもなく本件審決は取り消されるべきものであるとして、原告の請求を認容した。本判決は、下請業者を用いて役務を提供した場合における商標法上の「使用」主体の評価、及び建築請負に付随する見積書類が「地質の調査」役務の「取引書類」に該当するかという点で、実務上参考となる判断である。