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知財

特許権侵害差止等請求事件

判決データ

事件番号
平成30ワ5189
事件名
特許権侵害差止等請求事件
裁判所
大阪地方裁判所
裁判年月日
2019年9月19日
裁判官
谷有恒野上誠一島村陽子

AI概要

【事案の概要】 原告は、「養殖魚介類への栄養補給体及びその製造方法」に係る特許権を被告P2と共有し(共有特許権)、「透析機洗浄排水の中和処理用マグネシウム系緩速溶解剤」に係る特許権(甲4特許権)を単独で保有する発明者である。被告会社は、カキ殻粉末と水酸化マグネシウムを混練・固化した粒状物「ケアシェル」(被告製品)を第三者に販売し、また平成29年に中国の会社との間で製造技術指導等を内容とする業務委託契約を締結して3年間で合計1500万円を受領していた。原告は、被告らがこの製品の製造販売を通じて共有特許権を直接侵害し(均等侵害を含む)、甲4特許権の間接侵害(特許法101条5号)にも当たるとして、被告会社に対し製造販売の差止め・製造装置の廃棄・約2873万円の損害賠償等を請求した。加えて、中国の会社への技術指導が共有特許権についての通常実施権の無断許諾に当たるとし(特許法73条3項違反)、被告P2については代表取締役の任務懈怠に基づく会社法429条1項の第三者責任も追及した。共有特許権の共有者である原告と被告P2はかつて解散会社を通じて共同で製品を販売していたが、解散会社の解散後、被告P2が個人事業「ケアシェルサポート」として製造設備・原材料を引き継ぎ、製品を被告会社に卸すという体制が構築されたことが背景にある。 【争点】 主要な争点は、①被告会社が被告製品を「製造」したといえるか(被告P2個人による製造と消尽の抗弁の当否)、②甲4特許発明が物の発明か方法の発明か(間接侵害成否の前提)、③本件業務委託契約が中国の会社に対する共有特許権の実施許諾を内容とするか、④特許権侵害が成立しない場合に「法律上の保護に値する利益」侵害としての一般不法行為が成立するか、である。 【判旨】 裁判所は原告の請求をいずれも棄却した。第一に、被告会社の決算報告書・法人事業概況説明書に被告製品を「仕入れた」旨の記載があり、原材料や製造原価の記載が一切ないこと、証拠保全で確保された客観資料と被告P2の供述が整合することから、被告製品を製造したのは個人事業主たる被告P2であって被告会社ではないと認定した。共有特許権の共有者は他の共有者の同意なく自ら実施できるから(特許法73条2項)、被告P2が製造し被告会社に販売した時点で共有特許権は消尽し、被告会社の販売行為に特許権の効力は及ばない。被告会社が被告P2の一人会社であることから利益相反取引が無効になるとの原告主張も、最高裁昭和45年8月20日判決を引用して排斥した。第二に、甲4特許については、特許請求の範囲に「…中和処理用マグネシウム系緩速溶解剤」と物として明記され、出願過程でも製造方法の請求項は補正で削除されていることから、最高裁平成11年7月16日判決の趣旨に従い物の発明であると認定し、方法の発明であることを前提とする間接侵害主張を退けた。第三に、中国の会社との業務委託契約は、「日本国以外で」の製造販売に限定し、日本国内での製造・販売・輸出を明示的に禁じる条項(違約金付き)を備えており、共有特許権の日本国内での実施許諾を内容とするものとは認められず、また中国会社が現に共有特許の実施品を製造した証拠もないから、特許法73条3項違反は成立しない。第四に、原告主張の「炭酸ガス雰囲気下での保存技術」は甲4特許の技術的範囲を超えるものであり、営業秘密としての保護要件も満たさないから、一般不法行為による保護にも値しない。以上により、被告P2の会社法429条1項責任も基礎を欠くとして否定された。本判決は、共有特許権の消尽・個人事業主と一人会社の法人格の峻別・物の発明と方法の発明の区別・国外実施許諾契約の射程といった特許実務上の重要論点を正面から扱った事例として意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。