商標権移転登録手続等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、イタリアの宝飾ブランド「ダミアーニ」の日本法人である原告が、鹿児島県等で「ROCCA(ロッカ)」の名称で宝飾店を運営する被告に対し、被告名義で登録されている「ROCCA」等に関する9件の登録商標について、商標権の移転登録手続又は商標登録の抹消登録手続を求めた事案である。 「ロッカ」は1794年に誕生したイタリアのジュエリーブランドで、平成20年に原告の属するダミアーニ・グループに吸収合併された。被告は平成15年7月頃に宝飾店を出店するに際し、原告及びダミアーニ社の代表者を兼ねていたAと面談し、店舗名を「ROCCA」とすることを決めた。その後、被告は平成18年に「ROCCA」の商標登録出願を行い、以後平成24年までに9件の商標登録を取得した。 原告は、平成15年7月にAと被告代表者との間で「ROCCA」の使用許諾契約(当初使用許諾契約)が口頭で成立し、さらに平成26年4月には、原告が真の権利者であること、被告の商標登録は原告の許諾に基づくものであること、業務提携終了時には被告が原告に商標権を移転することを内容とする修正合意(本件修正合意)が口頭で成立したと主張し、本件契約を信頼関係破壊により解約したとして、主位的に商標権の移転登録、予備的に商標登録の抹消登録を求めた。これに対し被告は、本件契約締結の事実そのものを否認した。 【争点】 本件の争点は、原告と被告との間に当初使用許諾契約及び本件修正合意(本件契約)が締結されたか否かである。原告主張の契約内容は、商標権者である被告が、商標権者でない原告を真の権利者と認め、さらに業務提携終了時には無償で商標権を移転するという、被告にとって一方的に不利な重大な内容であり、その合意の有無が問われた。 【判旨】 請求棄却。 裁判所は、原告主張の本件契約の内容が、商標権者である被告の立場を覆し、商標権者でない原告に一方的に有利な内容であって、当事者双方にとって通常の取引とは質的に異なる重大なものであるにもかかわらず、契約書、覚書その他の客観的証拠が一切存在しない点を重視した。 そのうえで、平成15年7月当時、日本国内で「ROCCA」がダミアーニ・グループやロッカ社のものとして著名・周知であったことや、ダミアーニ・グループが「ROCCA」に関して何らかの権利を有していたことを認めるに足りる客観的証拠はないと認定し、被告がわざわざ原告を真の権利者と扱って使用許諾を受ける合理的理由はなく、また原告自身も約2年半にわたり「ROCCA」の商標登録出願等、真の権利者としての権利確保行動を何らとっていない点を指摘した。 さらに、ダミアーニ社は平成21年に本件登録商標1について無効審判請求を行ったが、平成22年2月の審決で請求は不成立と判断されており、平成20年以降、原告と被告の取引はほぼ途絶えていた。被告は「ROCCA」に係る権利を獲得・保持する態度を一貫してとっており、このような行動は、自ら商標権を手放す内容の本件修正合意とは相容れず、被告が従前の態度を翻して修正合意を行う相当な理由は認められないと判断した。 Aの陳述については、平成15年にダミアーニ・グループが「ROCCA\CALDERONI」商標を有していたという内容が、同商標がロッカ社から平成21年にダミアーニ社へ移転されたとする本件審決の認定と矛盾することから、信用性が乏しいと評価した。 以上により、本件契約の締結を認めることはできないとして、原告の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却した。