AI概要
【事案の概要】 本件は、筆墨文房具の製造販売仲介業を営む反訴原告(株式会社あかしや)が、書画筆等の製造販売業者である反訴被告(広島筆産業株式会社)に対し、反訴被告が販売するカラー筆ペン「筆姫」が、反訴原告が平成14年から販売するカラー筆ペン「彩」(現行モデルは平成18年以降)と類似の商品等表示を使用するものであり、譲渡等行為が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当するとして、同法3条1項・2項に基づき販売差止め及び関連物件の廃棄を求めた事案である。 もともとは反訴被告が平成30年12月、反訴原告に対し製造販売中止債務の不存在確認を求める本訴を提起していたところ、これに対して反訴原告が平成31年2月に本件反訴を提起し、その後反訴被告は本訴を取り下げたため、反訴のみが審理された。 反訴原告は、彩の特徴として、(1)商品形態(先口が軸から穂先に至るまで段差が小さい円錐形状で、軸との境界部分にインク漏れ防止の溝があり、先口の色がインクと同色である点、穂先が毛筆タイプである点、キャップが透明でクリップ付きである点、軸がグリップなし・カートリッジ交換式でない長細い濃紺色である点)、(2)商品名・ロゴ等を印刷した台紙付きで透明ビニール袋に包装する包装態様、(3)「日本の伝統色」を掲げた全30色のカラーバリエーションを主張し、これらの組合せが商品等表示として周知性を取得していると主張した。 これに対し反訴被告は、筆ペンは業界基準上マーキングペンの一種に分類されており、反訴原告が指摘する各特徴はいずれもサインペンやマーカーを含む同種他社商品にも見られるありふれたものであると反論した。 【争点】 (1) 反訴原告商品の形態等に特別顕著性及び周知性が認められ、不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当するか (2) 両商品の形態等の類否及び混同のおそれの有無 【判旨】 大阪地裁は、反訴原告の請求をいずれも棄却した。 まず、商品形態が「商品等表示」に該当するためには、(1)客観的に他の同種商品と異なる顕著な特徴を有する特別顕著性と、(2)長期間の独占的使用又は強力な宣伝広告等により需要者にその形態が特定事業者の出所を表示するものとして周知となっていることの双方を要すると解される、との一般論を示した。 次に比較対象商品の範囲について、日本筆記具工業会の業界基準では筆ペンが「マーキングペン」の一種に位置付けられ、製造販売元のウェブサイトでもサインペンと筆ペンが必ずしも峻別されずに宣伝され、店舗でも近接陳列されていること、字を書いたり絵を描いたりする用途で共通することなどから、筆ペンだけでなくマーカーやサインペンも含めて比較するのが相当であるとした。 その上で、(1)先口の円錐形状・溝・インク同色、(2)毛筆タイプの穂先、(3)透明・クリップ付きキャップ、(4)グリップなし・長細い・濃紺色の軸のいずれも、別紙比較商品目録記載の他社商品に同様の形態が存在するありふれたものであり、客観的に同種商品と異なる顕著な特徴とは認められないと判断した。包装態様についても、商品そのものと包装は本来区別されるべきであり、反訴原告商品にはセット販売もあること、ビニール製吊下袋・台紙付き包装は業界でありふれた手法であることから、特別顕著性を欠くと判断した。「日本の伝統色」のカラーバリエーションも、本件色事典掲載の色を採用する他社商品が存在し、比較商品の多くがそれ以上の色数を展開していることから、顕著な特徴とは認められないとした。 さらに、反訴原告が指摘する各要素の組合せについても、個々の要素がいずれもありふれたものである以上、組み合わせることで客観的に同種商品と異なる顕著な特徴が生じたと見るべき事情は存在しないとして、特別顕著性を否定した。結論として、反訴原告商品の形態等は「商品等表示」に該当せず、周知性等その他の要件を検討するまでもなく請求は理由がないと判示した。