特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、住宅建築用の建材であるスペーサ(土台と基礎の間に敷き込む部材)に関する特許権侵害訴訟である。原告城東テクノ株式会社は、「基礎パッキン用スペーサ」に係る特許(本件第1特許、存続期間満了済み)をかつて保有し、また「台輪」に係る二つの特許(本件第2・第3特許)を訴外ミサワホーム株式会社と共有している。原告は、被告吉川化成株式会社がこれらの特許権を侵害する製品(被告第1製品および被告第2製品)を製造販売しているとして、特許法100条1項に基づく製造販売等の差止め、同条2項に基づく製品の廃棄、および特許権侵害の不法行為に基づき合計約1億7,419万円の損害賠償を求めた事案である。本件第2特許は、布基礎の天端面周縁に生じる凸部(バリ)と干渉しないよう台輪下面縁部と側面縁部の間にテーパ部を設ける点に特徴があり、本件第3特許は、台輪同士を長手方向に接続する嵌合部・被嵌合部を設けることで施工の容易化を図るものであった。被告第1製品については技術的範囲に属することに争いはなかったが、被告は被告第2製品について本件第2特許の「テーパ部」該当性を争うとともに、作用効果不奏功の抗弁、消滅時効等も主張した。 【争点】 (1) 被告第2製品が本件第2発明の構成要件2Eの「テーパ部」を備え、その技術的範囲に属するか、(2) 特許法102条2項の「利益の額」算定において消費税相当額や茨城工場の改修工事費用等をどのように扱うか、(3) 競合品の存在や本件各特許の顧客吸引力の程度を踏まえた推定覆滅の可否・範囲、共有者ミサワホームの相当実施料額の扱い、(4) 原告がカタログや展示会を通じて被告製品を認識したことによる消滅時効の成否が主たる争点となった。 【判旨】 大阪地裁第26民事部は、原告の請求を一部認容した。第2発明の「テーパ部」は、台輪本体の下面縁部と側面縁部の間に下面または側面に対して傾斜させられたものであれば足り、その大きさや形状を限定的に解釈すべき根拠はないとして、被告第2製品の面取り部はこれに該当し、技術的範囲に属すると判断した。施工現場では凸部除去やセルフレベリング材使用によっても凸部が完全になくなるとは限らず、外面合わせによる設置も行われることから、作用効果不奏功の抗弁も排斥した。損害額については、特許法102条2項の「利益の額」算定に当たり消費税込みの売上額を基礎とすべきとし(消費税法基本通達5-2-5を参照)、カタログ作成費用の半額や茨城工場の改修工事費用・電気工事費用・キュービクル等のリース料の一部を法定耐用年数の倍を使用可能年数として按分控除すべきとした。推定覆滅については、本件第2発明の効果1や本件第3発明の接続部に関する作用効果は従来技術でも奏することが可能であったこと、被告カタログでは強度・換気性能・省施工といった点が前面に出され「テーパ部」や「連結構造」の強調度合いが低いことなどから、顧客吸引力は相対的に小さいとして7割の限度で覆滅を認めた。さらに共有者ミサワホームの損害額(相当実施料率4%の2分の1)も控除した結果、本件第1特許分と合わせ、被告に対し約6,828万円の支払を命ずるとともに、被告第2製品の製造販売等の差止めおよび廃棄を命じた。消滅時効の主張については、原告が被告製品の存在および製造元を認識したと認めるに足りる証拠がないとして排斥した。本判決は、特許法102条2項の「利益の額」に消費税相当額を含めるべきとの判断や、侵害品製造のための工場改修費用を法定耐用年数の倍で按分控除する具体的手法を示した点で実務上の意義を有する。