公契約関係競売入札妨害,贈賄
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、電気・土木・清掃施設工事等を業とするA社B支店C営業所長であった被告人が、福岡県築上町が平成28年7月に実施したし尿処理施設建設工事(落札価格約8億円)の条件付一般競争入札をめぐり、同町議会議員Dと共謀して入札の公正を害する行為(公契約関係競売入札妨害)に及び、さらにDに対して現金合計800万円を供与(贈賄)した事案である。 被告人は、A社に本件工事を落札させる目的で、平成28年5月下旬頃から同年6月20日頃にかけて、議員Dを介して、町の環境課長としてし尿処理施設建設工事の入札参加資格条件の検討・提案等に従事していた町職員Eに働きかけ、A社を含む特定業者間での談合が容易になるよう、入札参加資格要件の総合評定値を「土木一式工事」「機械器具設置工事」の2業種で「800点以上」としていた案に、「清掃施設工事」を追加したうえで、3業種とも「900点以上」とする厳しい要件に変更させ、町長にその内容で決定させた。さらに同年7月上旬頃には、Dを通じて、本来非公表とされる入札参加資格確認申請を行った業者数及び業者名という秘密事項の教示を受け、同月19日の入札でA社に最低制限価格を約3700万円上回る7億9450万円で落札させた。被告人は、これらのあっせん行為の報酬として、Dに対し2回にわたり現金200万円及び600万円の合計800万円を供与した。 【判旨(量刑)】 福岡地方裁判所小倉支部は、被告人を懲役2年に処したうえで、3年間その刑の執行を猶予する判決を言い渡した(検察官の求刑は懲役2年)。 裁判所は、被告人が町議会議員と共謀し、A社に有利な入札参加資格条件を設定させたうえ、保秘の対象となる入札参加予定業者数・業者名の教示まで受けており、これら恣意的行為により本件入札の公正が害された度合いはかなり高いと指摘した。実際の落札価格が最低制限価格を約3700万円も上回っていた点についても、他のA社社員による談合が加わっての結果とはいえ、談合の前提を整えた被告人の行為の影響は大きいと評価した。贈賄の金額が合計800万円と高額であることも含め、社会的影響の大きな事案と位置付けた。動機についても、議員側からの強い働きかけが契機とはいえ、自らの勤務先の利益を最優先に考え議員の力を積極的に利用したものとして、酌量の余地は乏しいとした。 もっとも、本件がA社落札に向けた複数社員関与の違法行為の一部であり、被告人のA社内での地位に照らすと影響を被告人のみに負わせるのは酷な面があること、捜査段階から事実を認め反省していること、前科前歴がなく妻が更生を支えると証言していることなどの酌むべき事情を併せ考慮し、社会内更生の機会を与えるのが相当として刑の執行を猶予した。本判決は、公共工事入札における官製談合的な構造に対し、刑事責任の軽視は許されないとしつつ、企業内の立場や役割分担をも踏まえた量刑判断を示したものである。