消費税更正処分等取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、不動産業を営む控訴人(原告)が、平成25年4月25日に建物の売買契約を締結し、同月の課税期間分の消費税申告において当該建物に係る課税仕入れを計上して仕入税額控除を行ったところ、税務署長がこれを否認し、建物の引渡しが行われた翌月(5月30日)が「課税仕入れを行った日」に当たるとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、控訴人がその取消しを求めた事案である。 消費税法30条1項1号は、事業者が「国内において行う課税仕入れ」について、当該「課税仕入れを行った日」の属する課税期間から仕入税額控除を認めている。もっとも、何をもって「課税仕入れを行った日」とするかについて同法は明確な基準を定めておらず、通達(消費税法基本通達)では、固定資産の譲渡の時期は原則として引渡しのあった日とするが、事業者が契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としている場合にはこれを認める旨のただし書が置かれている。控訴人は、本件建物の売買契約は同日に締結され停止条件等も付されていないから、契約の効力発生日である平成25年4月25日を「課税仕入れを行った日」として申告したものであり、通達の公的見解に従った適法な処理であると主張した。 原審(東京地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。あわせて、本件取引に関与した司法書士への報酬についても、同じく同日を課税仕入れの時期と認めるべきか、本件更正処分が信義則に反しないか、理由の提示に不備はないか、過少申告加算税における「正当な理由」があるかが問題となった。 【争点】 主な争点は、(1)本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」が平成25年4月の課税期間に属するか、(2)本件司法書士報酬に係る「課税仕入れを行った日」が同課税期間に属するか、(3)本件更正処分等が信義則に反するか、(4)更正処分の理由提示に不備があるか、(5)国税通則法65条4項の「正当な理由」があるかの5点である。 【判旨】 東京高裁は控訴をいずれも棄却した。本件通達ただし書は、契約の締結の日であっても、契約条項や両当事者の意思等に照らし、当該譲渡に係る権利又は債務が確定するに至った状態が生じていれば、その日を契約の効力発生の日として資産の譲渡の時期と認める趣旨であり、そのような実体を欠くにもかかわらず納税者に自由な選択権を与え契約締結日を資産の譲渡時期とすることを認めることは、納税者の恣意を許さず課税の公平を期すという観点から許容し得ないと判示した。本件では契約締結日に建物の現実の支配が移転し権利義務が確定した状態が生じたとは認められず、課税仕入れの時期は契約締結日に当たらないとした。司法書士報酬についても、課税仕入れといえるためには役務提供を現実に受け経済的利益を収受すべき状態が実現していることが必要であり、登記手続等を行った平成25年5月30日が基準日となるとして、内部の経理処理の時点を根拠とする主張を排斥した。信義則違反の主張についても、控訴人の解釈は通達が明らかにしていた見解とはいえず、不利益は自ら解釈を誤ったことに起因するとした。理由提示の不備及び「正当な理由」についてもいずれも否定し、原判決を正当として維持した。本判決は、消費税における仕入税額控除の時期について、通達ただし書の射程を実質的な権利義務確定の有無により画し、納税者の恣意的な選択を許さないとする点で実務上重要な意義を有する。