AI概要
【事案の概要】 本件は、ベッド操作装置に関する特許出願の拒絶査定不服審判において請求不成立の審決を受けた原告パラマウントベッド株式会社が、審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 原告は、平成25年4月12日、発明の名称を「ベッド操作装置及びプログラム」とする特許出願をした。本願発明は、背上げ・足上げ・昇降といった介護用ベッドの動作を制御するリモコン型操作装置に関するもので、通電されると「待機状態」となり、操作ボタンが押され、その押下が解除されたことを検出したときに初めて「操作可能状態」に遷移する、という構成を特徴とする。従来は誤操作防止のために別個の電源ボタンを設けてロックを解除する方式が一般的であったが、可動域が制限される利用者にとって電源ボタンを探して操作する負担が大きいという課題があった。本願発明は、動作ボタン自体の「押して離す」という動作によってロックを解除させることで、専用電源ボタンを不要とし、安全性と利便性の両立を図るものである。 特許庁は、本願発明は特開2002-99303号公報(引用例)に記載された介護用ベッドのリモコン制御方法に係る発明と同一であり、特許法29条1項3号の新規性を欠くとして拒絶査定を維持する審決をした。原告はこれを不服として本訴を提起し、取消事由として新規性判断の誤りを主張した。 【争点】 引用例に記載された発明(引用発明)が、本願発明の構成要件のうち、(1)「選択状態検出手段」「選択解除検出手段」、(2)「待機状態」、(3)「待機状態から操作可能状態に遷移させる遷移手段」の各構成を開示しているか否かが争点となった。原告は、引用例のSTEP1における確認動作の主体はアクチュエータであってリモコンではない、引用発明では電源投入時から常に操作可能であって「待機状態」は存在しない、したがって「遷移」も観念できない、などと主張した。 【判旨】 知財高裁第1部は、原告の請求を棄却した。 まず、引用例にはリモコンがアクチュエータの動作を操作・制御するものと記載されており、キーが押されたか・解放されたかの確認はアクチュエータ制御の内容を構成するから、その確認動作を行う主体はリモコンであり、リモコンは「押されたか確認」「解放されたか確認」する構成を備えているといえる。したがって引用発明の当該各構成は、本願発明の「選択状態検出手段」「選択解除検出手段」に相当する。 次に、「待機状態」の意義について、本願明細書では「通電されているが操作ができる状態となっていない場合」等と定義されている。引用発明においては、電源投入後、キーが解放されさらに任意のキーが押されるまでの間はアクチュエータを起動できないから、この間リモコンは操作不能であって、本願発明の「待機状態」に相当する状態にある。 さらに「遷移手段」については、引用例のSTEP3に関する記載(キーが解放され、さらに任意のキーを押したときにアクチュエータを起動する)とフローチャートを併せ読めば、キーの解放をもって直ちに起動するのではなく、その後の押下を待って起動する構成が開示されており、キー解放の前後で「待機状態」から「操作可能状態」への遷移が生じている。したがってリモコンは遷移手段に相当する構成も備えている。 以上より、引用発明は本願発明の構成要件をすべて備えており、新規性を欠くとした審決の判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。本判決は、先行文献の技術的思想を実施例とフローチャートの記載を総合して解釈する際の手法を示すとともに、先行文献に明示的な文言がなくとも機能的・論理的に同一の構成が読み取れる場合には新規性が否定されることを確認したものである。