朝鮮高校生就学支援金不支給違憲損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、学校法人愛知朝鮮学園が設置・運営する愛知朝鮮高校について、同校に在籍していた生徒ら(控訴人ら)が国(被控訴人)を相手取り、同校を「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(支給法)に基づく就学支援金の支給対象外国人学校として指定しなかった文部科学大臣の処分(本件不指定処分)等が違法であると主張した国家賠償請求訴訟の控訴審である。いわゆる「高校無償化」制度では、各種学校である外国人学校も、文部科学省令(本件省令ハ)の定める要件を満たすものとして指定されれば支給対象となる仕組みになっていたところ、愛知朝鮮学園は平成22年11月、支給対象として指定するよう申請した。しかし文部科学大臣は平成25年2月20日、①本件省令ハを削除したこと、②平成24年度の教員数が本件規程6条の要件を満たさないこと、③本件規程13条(法令に基づく学校の運営の適正)に適合すると認めるに至らなかったことを理由に不指定処分をするとともに、同日付けで本件省令ハを削除する省令改正も公布した。控訴人らは、同処分は朝鮮学校の生徒を政治外交上の理由で排除する違法行為であり、平等権・人格権・学習権等を侵害したとして、各自慰謝料50万円と弁護士費用5万円の計55万円の支払を求めた。原判決(名古屋地裁)は請求を棄却し、控訴人らが控訴したのが本件である。 【争点】 争点は、本件不指定処分および本件省令ハの削除が違法として国家賠償責任を生じさせるかである。具体的には、(1)本件省令改正と本件不指定処分の効力発生の先後関係と、これが理由②・③の有効性に及ぼす影響、(2)愛知朝鮮高校が本件規程13条にいう「法令に基づく学校の運営を適正に行」っているといえるか、(3)同条の「法令」に教育基本法が含まれるか、教育基本法16条1項の「不当な支配」の解釈、(4)控訴人らが本件一連の行為により権利利益を侵害されたといえるかが主たる争点となった。 【判旨】 名古屋高裁は控訴をいずれも棄却した。まず、省令改正は平成25年2月20日の官報掲載により公布・施行されて即日効力を生じたのに対し、本件不指定処分は愛知朝鮮学園への通知書到達時である翌21日以降に効力を生じたと認定し、処分時点では本件省令ハは既に削除されていたから理由②・③は法的に意味をなさず、理由①のみが法的意義を有するとした。もっとも、本件省令改正が違法・無効であれば本件規程が適用され、理由②・③も理由たり得るとした。次に、控訴人らが国家賠償請求で救済されるためには、本件一連の行為がなければ愛知朝鮮高校が指定を受けられたこと、すなわち実体的要件を充足していたことの立証が必要であるとの前提を示した上で、支給法2条1項5号および本件省令ハの「高等学校の課程に類する課程」の解釈として、課程には教育活動のみならず学校運営の適正も含まれ、本件規程13条の「法令」には教育基本法が含まれると解した。旭川学テ事件最高裁判決を引用し、教育基本法16条1項の「不当な支配」はその主体を問わず、外部団体から教育の自主性をゆがめる支配を排斥する趣旨であると判示した。愛知朝鮮高校は、朝鮮総聯およびその傘下団体を通じて人事・財政・教育内容に組織的介入を受けており、北朝鮮の政治指導者を個人崇拝するような教育活動が行われているから、法令に基づく適正な運営が行われているとの確証を得られないとした文部科学大臣の判断に裁量権の逸脱・濫用はないとした。よって、控訴人らは本件省令ハの削除がなくても指定を受けられず、侵害されるべき法律上の権利利益を欠くとして、国家賠償請求を退けた。本件は、朝鮮学校無償化排除をめぐる一連の訴訟の名古屋訴訟控訴審であり、朝鮮総聯と朝鮮学校の関係を「不当な支配」として司法が正面から認定した判断として、教育行政の裁量統制と外国人学校への公費支給の範囲を画定する先例的意義を有する。