AI概要
【事案の概要】 被告人は、仕事を辞めて以降、内妻およびその母親の年金に頼って生活しており、家賃や携帯電話料金の滞納を抱え、深刻な困窮状態にあった。被害者は内妻の友人であり、被告人とも顔見知りで、多数の貴金属を自宅に保管していた人物である。内妻らは被害者に対して借金を申し込み、ネックレスを買い取る形で500万円を後日支払う約束をしていたが、その履行がなされないまま放置されていた。 犯行直前、被告人は自分用と内妻用に中古車2台(合計代金約232万円)を購入する契約を締結したものの、支払う当てもなく、支払期限が迫るにつれ代金か違約金のいずれかを支払わざるを得ない状況に追い込まれていた。被告人は、中古車代金の支払日を何度も延期しつつ、内妻らには告げずに、被害者との食事会を口実に単独で被害者宅を訪問する機会をつくった。さらに犯行前日には、以前ネックレスを売却した買取店に、近々多数の貴金属を持ち込む旨を予告していた。 犯行当日、被告人は被害者宅を訪問し、約1時間半の滞在中に紐で頸部を絞め付けるなどして被害者(当時62歳)を窒息死させ、現金約2000円、商品券、指輪等47点(時価合計約298万円相当)を強取した。犯行直後から翌日にかけて、被告人は被害者の貴金属を合計265万円で買取店に売却し、滞納家賃や中古車代金の支払、内妻らへの小遣いとして数日のうちに大半を費消した。 【争点】 被告人が金品強取の目的で被害者を殺害したか(強盗殺人罪の成否)が主たる争点である。弁護人および被告人は、被害品とされる貴金属は犯行前に被害者から譲り受けたものであり、強取目的はなく、被害者による内妻への侮辱的発言に激高して突発的に殺害したにすぎないから、成立するのは殺人罪にとどまると主張した。被告人は、被害者から密かに交際を持ちかけられ、金銭援助の一環として貴金属を交付されていたとも供述していた。 【判旨(量刑)】 名古屋地方裁判所は、被告人を無期懲役に処した(未決勾留日数中950日算入)。 裁判所は、被告人が支払に窮する中で中古車代金と違約金のいずれかを負担せざるを得ない状況下にあり、虚偽の食事会を口実に貴金属の保管場所を知る被害者宅を訪問し、前日には買取店に売却を予告していたこと、犯行直後から換金・費消に及んだ一連の経過を総合すれば、金品強取目的は優に推認されると判断した。被告人の弁解については、被害者の備忘録や家計簿に裏付けがないこと、起訴後に供述が大きく変遷していること、ほぼ面識のない被告人に対して被害者が突然交際を持ちかけ高額の貴金属を次々と譲渡したとする内容自体が不自然であること、貴金属を譲り受けていたのであれば換金を10日以上先延ばしにする合理的理由がないことなどから、信用性を否定した。 量刑については、人命軽視の甚だしい利欲的で凶悪な犯行であり、下あご骨折や多数の肋骨骨折等の損傷から強固な殺意が認められること、顔見知りの被害者を選んだ以上殺害も想定の範囲内にあったこと、計画性が明らかであること、身勝手極まりない動機に酌量の余地がないこと、犯行後も被害品を費消して平然と生活を続け、公判廷で被害者に責任転嫁する不合理な弁解に終始して反省がうかがえないことを指摘した。殺人を認めていることや前科がほぼないことを考慮しても、被害者1名の強盗殺人事案の量刑傾向に照らし無期懲役が相当であるとした。