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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成31行ケ10056
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年10月8日
裁判官
大鷹一郎國分隆文筈井卓矢

AI概要

【事案の概要】 本件は,FX(外国為替証拠金取引)の自動売買システムに関する特許権者である被告(株式会社マネースクエアHD)に対し,原告(株式会社外為オンライン)が提起した特許無効審判請求が不成立とされたことから,原告がその審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 本件特許は,発明の名称を「金融商品取引管理装置,金融商品取引管理システム,金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法」とするもの(特許第6154978号,請求項数12)で,平成26年5月1日の特許出願を分割して出願されたものである。その中核は,相場価格の変動に応じて複数の買い注文・売り注文を等しい値幅で連ねて一括生成し(いわゆるトラップリピートイフダン型の取引),さらに相場が上昇して最も高い売り注文価格の注文が約定すると,それよりさらに所定価格だけ高い価格帯に新たな売り注文を生成する「シフト機能」を備える点にある。相場のトレンドに追従して注文価格帯を自動的にずらすことで,一定範囲の値動きだけでなくトレンド相場からも利益を得られるよう設計された仕組みである。 原告は,本件特許について,甲1(特開2011-76511号公報,いわゆるトラップリピートイフダン注文に関する従来公報)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1),甲2(米国特許出願公開公報,いわゆるLOCK注文に関する公報)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2及び3),並びにサポート要件違反(無効理由4)を主張して無効審判を請求した。特許庁は平成31年3月19日,いずれの無効理由も理由がないとして請求不成立の審決をし,これに対し原告が同年4月17日本件訴訟を提起した。 【争点】 争点は大別して2点である。第一に,甲1発明又は甲2発明を主引用例として本件発明の進歩性を否定できるか(取消事由1ないし3)。特に,本件発明の特徴部分である構成要件1H(複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,それよりさらに所定価格だけ高い売り注文情報を生成するという「シフト機能」)を,甲1発明と甲2発明の組合せから当業者が容易に想到できたか否かが主要な論点となった。第二に,本件明細書の発明の詳細な説明には「シフト機能」と「いったんスルー注文」及び「決済トレール注文」を組み合わせた実施の形態3しか記載がないところ,これらを組み合わせない構成まで含む請求項の記載がサポート要件(特許法36条6項1号)を満たすか(取消事由4)である。 【判旨】 知的財産高等裁判所第4部は,原告の請求を棄却した。 進歩性については,甲1発明は「一定の価格帯に複数のイフダンオーダーを設定し,同じ価格帯で繰り返すことで相場が一定範囲で変動する状況から利益を得る」発明であって,シフト機能に関する記載も示唆もないと認定した。他方,甲2発明は「単一のLOCK価格によるイフダンオーダーにインクリメントオプションを設定し,指定価格だけ高い価格で取引を所定サイクル繰り返す」ものであって,複数のイフダンオーダーによるLOCK処理は記載も示唆もないと認定した。そのうえで,甲1発明と甲2発明は技術分野やイフダンオーダーの利用による利便性向上の点で共通するとしても,甲1発明に甲2のインクリメントオプションに係る構成を適用する動機付けは認められず,また甲2発明自体が構成要件1Hの構成全体を含むものでもないから,当業者が本件発明1の構成に容易に想到できたとは認められないと判示した。 サポート要件については,構成要件1Hが規定する「シフト機能」は,新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定した後に,既発注の注文とは異なる価格帯にシフトさせて新たな注文を発注する注文形態であり,本件明細書にはシフト機能を他の注文方法と組み合わせるか否かは任意であることが記載されていると認定した。そして,図35に示された実施の形態3の記載からは,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせない構成においても,最も高い売り注文が約定した段階でシフトが生ずることを当業者が理解できるから,構成要件1Hに係る構成は発明の詳細な説明に実質的に記載されているとして,サポート要件適合性を認めた本件審決の判断に誤りはないと判示した。 本判決は,FX自動売買の業界で普及している「トラリピ」型注文と「連続予約注文」型注文の発明の境界を画し,先行技術の記載範囲を超えて構成要件を組み合わせる動機付けを厳格に要求した事例として,金融系ソフトウェア特許の進歩性判断における実務的意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。