審決取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は台湾の通信機器メーカーであり、「デバイスツーデバイスオペレーションを処理する方法」と題する発明について特許出願を行った。本件発明は、携帯電話等の通信デバイスが基地局を介さず端末同士で直接通信する「D2D(デバイスツーデバイス)通信」と、従来型の基地局を経由する「D2C(デバイスツーセルラ)通信」とが同一サブフレーム上で衝突した場合に、どちらの通信を優先し、関連する別のサブフレームにおける動作をどう制御するかを規定するものであった。 原告は平成27年3月に本願特許出願を行ったが、特許庁から拒絶理由通知を受け、手続補正を行ったにもかかわらず拒絶査定を受けた。原告は拒絶査定不服審判を請求し、併せて特許請求の範囲について本件補正を行ったが、特許庁は本件補正を却下したうえ、本願発明は米国特許出願公開公報に記載された引用発明と同一ないし当業者が容易に想到し得たものであるとして、審判請求不成立との審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて本訴を提起した。 【争点】 主たる争点は、本件審決による一致点の認定の誤り及び相違点の看過の有無である。具体的には、本件補正発明の「第3のサブフレームが前記第1のサブフレームにおける前記D2Dオペレーションのためのスケジューリング割当てによってスケジュールされているとき」という構成要件(本件構成E-1)について、引用発明が同構成を備えているか否かが問題となった。原告は、ここにいう「D2Dオペレーション」は「初期送受信」に限定されるべきであり、引用発明に開示されているのは「再送」に関するスケジューリングに過ぎないため、両発明は当該構成において相違し、審決は相違点を看過したと主張した。これに対し被告は、当該スケジューリング割当ては初期送信・再送の双方を包含すると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、本件補正発明の特許請求の範囲の文言及び本件明細書の記載から、本件構成E-1は、D2CオペレーションがD2Dオペレーションと衝突して第1のサブフレームのD2Dオペレーションがストップされる本件構成Dを前提に「さらに」付加されたステップであり、両構成は関連付けて解釈すべきとした。そのうえで、本件構成E-1にいう「第3のサブフレームにおけるD2Dオペレーション」の内容について、特許請求の範囲にも明細書にも「再送」を除外する記載や示唆はなく、当該スケジューリング割当てには初期送受信のためのスケジューリングと再送のためのスケジューリングの双方が含まれると解するのが相当であると判示した。 この解釈を前提に、引用例の記載内容を検討したところ、引用発明では上位レイヤシグナリングで通知されるサブフレーム間隔に基づいて、データの送信(再送又は次のデータの送信)と受信成否情報の受信とが相互にスケジュールされる関係にあることから、引用発明の当該構成は本件構成E-1に相当するものであると認められた。したがって、審決の一致点認定に誤りはなく、相違点の看過もないとして、原告主張の取消事由はいずれも理由がないと結論づけた。本判決は、特許請求の範囲の文言を明細書の記載に照らして素直に解釈し、出願人が後付けで主張する限定解釈を認めなかった事例であり、補正却下・進歩性判断における請求項解釈の実務において参考となる。