特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、薬剤分包装置及びこれに用いるロールペーパを製造・販売する株式会社湯山製作所(一審原告)が、自社製薬剤分包装置の使用済み中空芯管を薬局等から回収し、これに新たに薬剤分包用シートを巻き直した非純正品(被告製品)を製造・販売していた株式会社ネクスト及び株式会社ヨシヤ(一審被告ら)に対し、特許権(発明の名称「薬剤分包用ロールペーパ」)及び二つの商標権(一審原告製中空芯管の端面プラスチックリングに型押しで刻印された標章)の侵害を理由として、差止め及び損害賠償等を求めた事案の控訴審である。 被告製品は、一審原告が所有権を留保していた使用済み中空芯管をそのまま再利用して生産されたものであるため、芯管端面に一審原告の商標が刻印された状態で流通していた。一審被告らは、ウェブサイトやダイレクトメール等を通じて「非純正分包紙」「ユヤマ分包機対応」等の表示で販売活動を行い、平成26年11月の捜索差押えを契機に生産・販売を中止した。一審被告ネクスト及びその代表者は既に商標法違反で有罪判決を受けている。原審(大阪地裁)は特許権及び商標権侵害を認めて損害賠償等を一部認容したため、双方が控訴した。 【争点】 主要な争点は、①被告製品が特許発明(サブコンビネーション発明)の技術的範囲に属するか、特に請求項中の「薬剤分包装置に用いられ」の意義、②補正・サポート要件・明確性・分割要件違反による特許無効事由の有無、③独占禁止法違反を理由とする特許権・商標権行使の権利濫用該当性、④中空芯管刻印の視認可能性と商標法26条1項6号該当性、⑤損害額の推定覆滅事由の有無である。 【判旨】 知財高裁第2部は、双方の控訴をいずれも棄却した。 技術的範囲については、本件訂正発明は「薬剤分包用ロールペーパ」という物の発明であり、請求項中の薬剤分包装置に関する記載は、ロールペーパが当該装置で「使用可能」であることを特定するにとどまり、用途発明のように実際に当該装置で使用されてはじめて侵害が成立すると解するものではないと判示した。その上で、被告製品は特許発明の構成要件をすべて充足するとして技術的範囲への属性を肯定した。 特許無効の主張については、「シートを2つ折りし」から「2つ折りされたシート」への補正は、シングルタイプ・ダブルタイプのいずれも包含する記載であって新規事項の追加に当たらず、サポート要件・明確性要件も満たし、分割要件違反もないとして、いずれも排斥した。 権利濫用の主張については、一審原告製芯管を再利用しない形でも非純正品事業は可能であって競争制限の程度は大きくなく、純正品使用を勧める取扱説明書等が直ちに独禁法違反となるものではないとして、独禁法21条の「権利の行使」に該当し権利濫用には当たらないとした。 商標権侵害については、中空芯管に型押しされた本件刻印は十分に視認可能で流通過程において出所表示機能を果たしており、購入者の全員が非純正品であると正確に認識していたとは認められないから、商標法26条1項6号は適用されず実質的違法性も認められるとして侵害を肯定した。もっとも被告製品の販売中止から4年以上が経過し在庫も没収されていることから差止めの必要性は否定した。 損害については、被告製品の代替として一審原告製品が購入されたであろうと認め、特許法102条2項の推定は覆滅しないとして、一審被告ネクストに対し損害金415万6644円、一審被告ら連帯で71万6378円、並びに不当利得返還金合計130万余の支払を命じた原判決を維持した。