AI概要
【事案の概要】 本件は、弁護士法人B法律事務所(被告人法人)の社員弁護士であった被告人Aが、同法人代表社員弁護士Cと共謀の上、弁護士資格を有しない株式会社Dの取締役Eら(いわゆる非弁活動者)に対し、報酬を得る目的で業として法律事務を取り扱うことを可能にするため、被告人法人及び被告人Aの弁護士名義を利用させたとして、弁護士法違反(非弁提携)で起訴された事案である。 事件の背景として、司法書士法人H法務事務所は、平成28年6月の最高裁判例により債権価額140万円を超える債務整理を受任できなくなったため、同事務所代表者Iや広告収入を得ていた株式会社DのEらが、弁護士資格を有するCらと相談し、H法務事務所では受任できない高額案件を受け皿として処理するために被告人法人を設立した。被告人法人大阪事務所では、事務員が自らの判断で債務者との面談・事情聴取・処理方針の決定・委任契約締結を行い、弁護士は形式的な挨拶のみを行うという運用がなされ、債権者との和解交渉や和解書作成・押印まですべて事務員限りで行われていた。受任件数は約1年9か月間で2665件に達し、弁護士のみでは到底対応不可能な状況であった。被告人Aは月額手取り35万円の報酬で社員弁護士に就任し、自身の弁護士印を大阪事務所に預け置き、事務員による和解書への押印を容認していた。 【争点】 被告人A側は、公判において、Cとの間で非弁活動につき意思を通じ合っておらず正犯意思も欠いていたとして、共謀共同正犯は成立せず、成立するとしても幇助犯にとどまる旨主張した。そこで、被告人Aが事務員による実質的な法律事務取扱いを認識していたか、Cとの共謀が認められるか、自己の犯罪として本件に加担したといえるかが争点となった。 【判旨(量刑)】 大阪地裁は、被告人Aが捜査段階で非弁行為該当性を理解しつつ報酬欲しさで加担した旨自白していたこと、C・J・K各証言と自白が整合し信用性が高いこと、Cしか弁護士がいない状況で2665件もの任意整理を処理していたこと等から、被告人Aは事務員が単なる補助の域を超え実質的判断を伴う業務まで行っていることを認識しCと意思を通じていたと認定し、公判供述を信用性に欠けるとして排斥した。その上で、本件は当初からコストを抑えて暴利を得るために非弁活動を隠蔽する目的で設立された法人による組織的・職業的犯行で、違法性の程度が大きく、弁護士・弁護士法人に対する社会的信頼も著しく損なうとして、被告人Aに懲役1年(執行猶予3年)、被告人法人に罰金300万円を言い渡した。取り込まれた面や役割が従属的であったこと、前科前歴がなく本件発覚後に残務整理を行っていること、父親や先輩弁護士の監督誓約等を考慮して執行猶予を付した。