殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂,窃盗
判決データ
- 事件番号
- 平成29わ115
- 事件名
- 殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂,窃盗
- 裁判所
- 福岡地方裁判所
- 裁判年月日
- 2019年10月21日
AI概要
【事案の概要】 本件は、福岡県北九州市を拠点とする指定暴力団「甲會」の傘下組織である丙組の組員であった被告人が、暴力団活動の一環として関与した重大事件の刑事責任が問われた事案である。起訴された犯罪事実は、(1)平成22年3月、a区自治総連合会会長A2(当時75歳)宅にけん銃で弾丸6発を撃ち込んだ殺人未遂・銃刀法違反事件(自治会長事件)、(2)平成23年2月、工事会社の工事長M(当時50歳)にけん銃3発を発射し下腹部に命中させた殺人未遂・銃刀法違反事件(I事件)、(3)平成23年11月の犯行用バイクの窃盗事件、(4)同月、P株式会社会長T(当時72歳)をけん銃で射殺した殺人・銃刀法違反事件(P事件)の4件である。被告人は実行犯ではなく、上位者Cの指示を受けて、足のつかないバイクや自動車の調達、他人名義の携帯電話の用意、実行犯の現場への送迎、犯行後の逃走支援、凶器・着衣の処分といった役割を担った。自治会長事件では標的が暴力団追放活動に取り組む自治会関係者であり、I事件及びP事件は甲會の意に沿わない企業・個人に対する見せしめと推察された。 【争点】 被告人は窃盗事件については犯行を認めたが、その余の3事件については、①上位者Cの関与の有無、②被告人とCら他の共犯者との間の殺人及び銃刀法違反の共謀の有無、さらに自治会長事件については③実行犯の殺意の有無が争われた。被告人は、実行役から「脅しに行く」「コンクリートブロックで車を壊す」程度と聞いていたに過ぎず、けん銃使用による殺傷事件になることは認識していなかったと主張した。 【判旨(量刑)】 福岡地裁は、共犯者Gの供述が具体的かつ詳細で、携帯電話通話履歴、防犯カメラ映像、遺留品等の客観証拠と符合することから信用性が高いと判断し、Cの関与を否定する被告人の供述は具体性を欠く曖昧なものとして排斥した。自治会長事件の実行犯の殺意については、深夜に一般家屋内へ殺傷能力の高いけん銃で弾丸6発をほぼ水平方向に発射し、居室押入れにも着弾していることから未必的殺意が優に認められるとした。共謀の点については、被告人が過去に甲會組員のけん銃使用事件を見聞きしていたこと、自治会長事件を経てI事件・P事件に臨んだ経緯等から、遅くとも各事件の集合時点において、実行役がけん銃を含む凶器を使用して人を殺傷する事件を起こすであろうことを少なくとも未必的に認識していたと認定し、送迎役・調達役・処分役として重要な役割を果たしたとして共謀共同正犯の成立を認めた。量刑については、各犯行の組織性・計画性が際立ち凶悪性が極めて高いこと、被害者1名が死亡し1名が傷害を負う重大結果が生じたこと、反社会的な動機で厳しく非難されるべきこと、累犯前科を含む3回の服役歴があるのに約1年8か月の間に本件各犯行に及び規範意識に著しく欠けること、甲會との関係を断ち切らず真摯な反省がみられないことを指摘しつつ、実行行為に直接関与しておらずG以外との関係では従属的立場であったこと、内妻の情状証言、本件が確定裁判の余罪であることも考慮し、求刑懲役25年に対し懲役20年を言い渡した。