AI概要
【事案の概要】 本件は、沖縄県名護市辺野古沿岸における普天間飛行場代替施設建設をめぐる一連の紛争の一環である。沖縄防衛局は、平成25年、当時の沖縄県知事から公有水面埋立法42条1項に基づく埋立承認(本件承認処分)を受けていたが、平成30年8月、知事職務代理者から事務委任を受けた副知事が、処分要件の事後的不充足や附款違反を理由として本件承認処分を取り消した(本件承認取消処分)。これに対し沖縄防衛局長は、埋立法を所管する国土交通大臣(被告)に対し、行政不服審査法に基づく審査請求を行い、被告は平成31年4月5日、本件承認取消処分を取り消す旨の裁決(本件裁決)をした。 沖縄県知事(原告)は、本件裁決は違法な「国の関与」に当たるとして、国地方係争処理委員会に審査の申出をしたが、同委員会は本件裁決は「国の関与」に当たらないとして却下決定をした。そこで原告は、地方自治法251条の5第1項に基づき、本件裁決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 【争点】 本件裁決が地方自治法251条の5第1項に基づく訴訟の対象となる「国の関与」に当たるか否か(本案前の争点)。具体的には、自治法245条3号括弧書きで「国の関与」から除外される「審査請求に対する裁決」に本件裁決が該当するかが問われた。原告は、①沖縄防衛局はその「固有の資格」において本件承認取消処分の相手方となったため行審法の適用がないこと、②副知事の処分であり被告は審査庁になり得ないこと、③被告は本件埋立事業を推進する内閣の一員で中立性を欠き審査庁の立場を濫用したこと、を主張し、いずれの点からも本件裁決は成立要件を欠く違法なものであり「裁決」として扱われないと主張した。 【判旨】 本件訴えを却下。裁判所はまず、裁決の内容や手続に違法があっても基本的には自治法245条3号括弧書きの「裁決」に当たり「国の関与」から除外されるとした上で、国の機関が「固有の資格」において相手方となった処分に対する裁決は例外的に「関与」に当たる余地があると示した。しかし埋立承認は、一般私人等が受ける埋立免許と、処分の性質・効果、実体的・手続的要件の面で本質的に異ならず、竣功認可の要否等の差異は処分後の手続に関する特則にすぎないから、国の機関は「固有の資格」ではなく一般私人と同様の立場で相手方となったと判断した。また、処分をした行政庁の権限が審査請求時までに消滅・移転した場合は、現に処分権限を有する行政庁が処分庁の立場を承継するから、本件審査請求時の処分庁は原告(沖縄県知事)であり、自治法255条の2第1項1号により審査請求すべき行政庁は埋立法所管大臣たる被告であるとした。さらに、法定受託事務に関する都道府県知事の処分について審査請求人と審査庁がともに国の機関となることは制度上当然に予定されており、閣議決定が個別処分の法令適合性判断を拘束するものでもないため、被告が審査庁の立場を濫用したとはいえないとした。以上から、本件裁決は自治法245条3号括弧書きの「裁決」に当たり「国の関与」から除外されるため、本件訴えは不適法として却下された。本判決は、地方自治法上の「国の関与」と「裁決」との区分、及び行審法における「固有の資格」概念の射程を示した先例として、国と地方の紛争処理制度の運用に重要な意義を有する。