特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、グリー株式会社が特許権者である「ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置」に関する特許(特許第6100339号)について、特許庁が特許異議申立事件において同特許を取り消す旨の決定をしたことを受け、原告が同決定の取消しを求めた事案である。 本件特許発明は、ネットワーク経由でプレイするソーシャルゲームにおいて、所定期間ゲームをプレイしていない休眠ユーザを抽出し、一のユーザが他のユーザにメッセージを送信するとの選択を受け付けた場合に、抽出された休眠ユーザにゲーム復帰を促すメッセージを送信し、そのメッセージを受信した休眠ユーザがゲームに復帰(参加)した場合に、メッセージ送信者に報酬(ゲーム内アイテム等)を付与するという仕組みを内容とするものであった。離脱ユーザの呼び戻しとユーザ間交流の活性化を同時に実現する技術である。 これに対し第三者から特許異議の申立てがされ、特許庁は、ソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」の「友情のきずな」キャンペーンに関するブログ記事(甲1)及びオンラインゲーム「メイプルストーリー」の「おかえりなさい!友情復活キャンペーン」に関するウェブページ(甲4)に基づき、当業者が容易に想到し得たものであって特許法29条2項により特許を受けることができないとして、特許取消決定をした。原告はこれを不服として決定取消訴訟を提起した。 【争点】 争点は、(1)引用文献(甲1のブログ記事、甲4のウェブページ)が本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったといえるか、特に、インターネットアーカイブのウェイバックマシンに保存されたコンテンツの公知性・信用性をどのように判断すべきか、(2)本件訂正特許発明1と引用発明1との相違点の認定に看過がないか(「メッセージを受信した」ことの意義)、(3)引用発明1に引用発明4を組み合わせることによる容易想到性の判断の当否、である。 原告は、ブログ記事中のスポンサー広告が出願後制作のゲーム画像である点や、ウェイバックマシンのURL数字部分が保存日時を示さず改ざん可能である点を主張し、公知性を争った。また「メッセージを受信した」とは現実の閲読を要するとして、相違点看過を主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所第4部は、原告の請求を棄却した。 まず甲1について、ブログの「11/25更新情報」項目横に表示された「2011.11.25 23:18」の記載、及び携帯端末画面のキャプチャ時刻がいずれも同時刻より前である連続性から、当該更新情報は平成23年11月25日に公衆利用可能となったと認定。スポンサー広告欄の画像は1か月以上更新のないブログに自動表示される仕組みであり、ブログ本文の更新日時とは無関係であるとして、原告の主張を排斥した。 甲4については、ウェイバックマシンのURL数字部分「20130427103728」は協定世界時(UTC)による保存日時を示すものであり、日本標準時に換算すれば平成25年4月27日19時37分28秒に収集・保存されたコンテンツであると認定。原告が援用する日経新聞電子版の日経平均数値の不一致は、リンク先の外部データが閲覧日時に最も近い日付で表示される仕様によるものであって、URL数字が保存日時を示すことを否定する根拠にはならないとした。また、改ざん可能性は一般論として否定できないとしても、具体的な改ざんを疑わせる事情がない以上、保存当時の内容が維持されているものとみなせると判示した。 相違点の看過の主張についても、請求項及び明細書の記載に照らせば、「メッセージを受信した」とは現実の閲読を要するものではなく、閲読し得る状態となれば足りると解釈し、引用発明1も本件発明の報酬付与機能を備えているとして退けた。 容易想到性についても、引用発明1・4はいずれもネットワークゲームにおいて休眠ユーザを復帰させユーザ間交流を活性化させる点で課題が共通し、引用発明1に引用発明4の「所定期間以上プレイしていない休眠ユーザ」構成を組み合わせる動機付けがあるとして、特許庁の判断を支持した。 本判決は、インターネットアーカイブ(ウェイバックマシン)によって保存されたウェブページを特許法29条1項3号の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」として扱う際の公知性認定の枠組みを示した点で、実務上の意義を有する。