損害賠償(著作権等侵害)請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、写真家である原告が、自己の撮影した写真(本件写真)について、被告が運営するアダルトサイト(風俗店に関する掲示板のまとめサイト)上に無断で複製・アップロードされ、公衆送信されたとして、著作権(複製権、公衆送信権)侵害および著作者人格権侵害を理由に、合計160万円の損害賠償を求めた事案である。被告は、遅くとも平成30年3月17日までに本件写真を複製して被告サイトにアップロードし、令和元年5月11日頃まで、被告サイトのトップページに、卑わいな画像等とともに1年以上にわたり掲載し続けていた。さらに、本件写真の右下には原告の氏名と整合する表示(クレジット)が付されていたため、原告があたかもアダルトサイトへの写真使用を許諾するカメラマンであるかのような外観が作出されていた。原告は、このような利用態様は、著作物の複製・公衆送信権を侵害するだけでなく、著作権法113条7項が定める「著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為」に該当し、著作者人格権を侵害するものであると主張した。原告は、著作権侵害分として41万8316円(逸失利益5万4000円+慰謝料30万円+弁護士費用等)、著作者人格権侵害分として118万1684円(慰謝料100万円+弁護士費用等)を請求した。被告は、適式の呼出しを受けながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書も提出しなかったため、請求原因事実を自白したものとみなされた。 【争点】 本件の主要な争点は、損害額の算定である。とりわけ、著作権法114条3項に基づく逸失利益(使用料相当額)として当初使用料1万円の5倍を請求できるか、著作権侵害とは別に著作者人格権侵害による高額な慰謝料(100万円)が認められるか、著作権侵害自体についても別途慰謝料(30万円)が認められるかが問題となった。 【判旨】 東京地裁は、被告による著作権侵害および著作者人格権侵害の事実を認定した上で、損害額について次のとおり判断し、合計36万2400円の限度で請求を認容した。まず逸失利益については、原告の当初使用料が1点1万円(税込1万0800円)、平成30年5月以降は1点2万円(税込2万1600円)に改訂されていたことを踏まえ、著作権法114条3項に基づく使用料相当額は3万2400円が相当とし、5倍相当の請求は認めなかった。次に著作者人格権侵害に係る慰謝料については、被告サイトが風俗店関連のまとめサイトであり、本件写真が1年以上にわたってトップページに大きく掲載され、原告の氏名表示も付されていたことから、原告が被った精神的苦痛は重大であるとし、30万円を相当と認めた。一方、著作権侵害に係る慰謝料については、著作権侵害による損害は財産的損害の賠償によって回復されるのが通常であるとして、これを否定した。内容証明郵便費用(2226円)も相当因果関係を欠くとして認めず、弁護士費用は3万円(著作権侵害分3000円、著作者人格権侵害分2万7000円)と認定した。遅延損害金の起算点については、公衆送信が継続的行為であることから、不法行為期間の終期である令和元年5月11日からの支払を命じた。本判決は、アダルトサイト等での無断利用による著作者人格権侵害について、名誉・声望を害する利用態様を重視して慰謝料を認めた事例として、写真の無断利用をめぐる実務上参考となる裁判例である。