政務活動費返還請求控訴事件、附帯控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成31行コ110
- 事件名
- 政務活動費返還請求控訴事件、附帯控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年10月30日
- 裁判官
- 村上正敏、遠藤浩太郎、板野俊哉
AI概要
【事案の概要】 杉並区内に事務所を有する住民団体(法人格のない社団)である第一審原告が、杉並区議会議員14名及び2会派が平成26年度に交付された政務活動費の一部を違法に支出し、法律上の原因なく利益を受けて杉並区に損失を及ぼしたとして、杉並区長である第一審被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、各議員等への不当利得返還請求権の行使を求めた住民訴訟の控訴審である。政務活動費は、議員の調査研究その他の活動に必要な経費として条例に基づき交付される公金であり、使途基準に反する支出は違法な公金支出となる。原審(東京地裁)は、一部の議員について請求を認容し、その余を棄却した。これに対し、第一審被告が相手方番号13のA区議に係る認容部分について控訴し、第一審原告が相手方番号11のB区議による支出番号11-2(B区政報告書16号に関する支出)について請求棄却部分の取消しを求めて附帯控訴した。第一審原告は当審で請求を減縮し、利息部分等を取り下げ、争点はA区議の支出番号13-3とB区議の支出番号11-2の2点に絞られた。 【争点】 争点は、(1)B区議が作成・配布した区政報告書16号の作成費用を政務活動費から支出することが、本件条例別表の定める「広聴広報費」に該当し適法といえるか、特に区議会議員選挙直前の発行で発行部数が2万部と大量であったことから選挙運動目的に充てられた違法な支出といえないか、(2)A区議による支出番号13-3(「A通信」と題する印刷物等に係る支出)が、政務活動としての広報ではなく、選挙活動・後援会活動等のための支出にあたり違法となるかの2点である。 【判旨】 東京高裁は、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した。まずB区議の区政報告書16号については、B区議が毎年3月頃に杉並区予算の成立・賛成の事実及び予算内容を紹介する区政報告書を定期的に作成・配布してきた経緯があり、16号も13号・14号と内容・レイアウトに大差がないことから、本件条例別表の「広聴広報費」の1及び2に該当し、政務活動費からの支出として許容されると認定した。選挙直前の発行時期や2万部という発行部数、平成27年に2か月間隔で2回配布したことをもって違法とする原告の主張は、同種報告書の従前の発行状況に照らし採用できないとした。他方、A区議の支出番号13-3については、印刷物の表題部に「A通信」と記載され、A区議の顔写真8枚とプロフィールが掲載されている点など原審認定の事情に加え、原審が「政治活動」としていた部分を「選挙活動、後援会活動等」と補正した上で、当該支出は政務活動ではなく選挙活動・後援会活動等のための支出であって政務活動費の使途基準に反し違法と判断し、A区議に対する31万0403円の不当利得返還請求権の行使を怠ることの違法確認及び同額の支払請求を命じる原判決を維持した。本判決は、議員の区政報告書が政務活動と選挙活動の境界にある場合の適法性判断の一例を示すものであり、従前の発行実績との連続性や内容の客観的性格を重視する一方、議員個人を強く宣伝する体裁の印刷物は政務活動費の対象外とする実務的な判断枠組みを示した点に意義がある。