AI概要
【事案の概要】 本件は、「脚立式作業台」と題する発明に係る特許第6254847号(以下「本件特許」)の無効審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、被告(ジー・オー・ピー株式会社)が保有するもので、作業床用天板の上方に略コ字状の枠部材を配置し、第1主脚側(昇降側)には一対のバーを設け、このバーが回動して開閉することで、作業空間を包囲しつつ作業者の昇降を容易にする構造を特徴とする。すなわち、一対のバーが直列に並んだ第1の状態(閉状態)と、回動して並列になる第2の状態(開状態)との間を軸支ピンを中心に平面上で移動できる構成である。 原告(アルインコ株式会社)は、本件特許発明が米国特許第7104361号(甲3)に記載された発明や別の米国特許(甲4)の発明、および公知技術(甲5~8)に基づき容易に発明できたものであるから、特許法29条2項により進歩性を欠くとして無効審判を請求した。特許庁は訂正請求を認めつつも無効理由を認めず、平成31年1月22日に「請求は成り立たない」との審決をしたため、原告がその取消しを求めて知財高裁に提訴したものである。 【争点】 本件の中心的争点は、本件訂正発明と甲3発明(引用発明)との相違点の認定が適切であったか、そして本件訂正発明の進歩性判断に誤りがあったかである。具体的には、(1)甲3発明の「直角部材105,106」のうち、本件発明の「一対のバー」と対比すべきが全体か「前方バー107」のみか、(2)本件発明の「作業者が接触することで端部付近で作業していることを認識させる」構成が甲3発明との相違点となるか、(3)一対のバーが「隙間を介して対向して略直列に位置するように軸着部によって支持される」構成が甲3発明のスピゴット109でラッチ止めされる構成と相違するか、(4)甲4発明の「ゲート42,44」の構成を甲3発明に組み合わせる動機付けがあるかが問題となった。 【判旨】 知財高裁第2部は、原告の請求を棄却した。裁判所は、一部の相違点認定については原告の主張に理由があると認めたものの、結論としては審決に誤りがないと判断した。すなわち、本件訂正発明の「一対のバー」は第1の状態において「隙間を介して」軸着部によって支持されるのに対し、甲3発明の「前方バー107」はスピゴット109を差し込んで連結・ラッチ止めされる構造であり、先端同士が連結されているため隙間を介して対向しているとは認められないとした。また、甲3発明は容易な運搬可能性を課題とするのに対し、本件訂正発明は作業の効率化と天板・主脚間の移動容易化を課題とするものであり、甲3には本件発明の相違点に係る構成の示唆はなく、甲5~8の周知技術を組み合わせても当業者が容易に想到できたとは認められないと判示した。無効理由2についても、甲4発明の「ゲート」はラダーの不正使用防止を目的とするのに対し、甲3発明の前方バーは作業者の安全確保を目的とする点で目的が相違するため、両者を組み合わせる動機付けはないと認定した。本判決は、引用発明との対比における目的・課題の相違を重視し、構成要件の微細な差異(隙間の有無、支持構造の違い)が進歩性を基礎づけ得ることを示した実務上意義のある知財事件である。