AI概要
【事案の概要】 刑務所に収容されている原告が、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(以下「法」という。)に基づき、札幌矯正管区長に対し、在監中の網走刑務所において平成27年10月19日午後5時頃に同所職員の行為によって負った負傷に関する診断書等の書類及び写真一切の開示を請求した事案である。これに対し札幌矯正管区長は、当該情報が法45条1項にいう「刑の執行」に係る保有個人情報に該当し開示請求の規定の適用から除外されるとして、情報の全部を開示しない旨の決定(本件不開示決定)をした。原告は、本件不開示決定の取消しと、上記情報を開示する旨の決定をすることの義務付けを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 主たる争点は、(1)本件不開示決定の適法性、すなわち医療上の措置に関する情報が法45条1項にいう「刑の執行」に係る保有個人情報に該当するか、本人自身からの開示請求であっても適用除外となるか、合憲限定解釈ないし適用違憲の余地があるか、写真については別異に解すべきかであり、(2)義務付けの訴えの適法性である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも退けた。法45条1項は刑の執行に係る保有個人情報について開示請求の規定を適用しない旨を定めるところ、本件情報は在監中の刑務所職員の行為によって負った負傷に関するものであり、刑の執行に係る情報に明らかに該当する。刑事収容施設における受刑者への処遇は刑事施設での拘置に必然的に内包される作用であり、その内容が医療上の措置であっても「刑の執行」に当たる。同項の趣旨は、前科・前歴・勾留歴等を示す情報の開示により本人の社会復帰や更生保護に不利益が生じるのを防ぐ点にあり、医療上の措置に係る情報も収容歴を明らかにする点で同様の弊害が生じるため、明文の根拠なく医療上の措置のみを除外することは相当でない。また、同項は文言上、開示請求者が誰であるかによって適用除外を区別しておらず、本人自身からの請求であっても一律に適用除外となる。本人が得た情報が他者の目に触れたり、第三者が本人に開示請求させる潜脱のおそれもあり、本人請求だから開示を認めるとの解釈は採り得ない。さらに、「医療情報に関する自己情報開示請求権」が憲法13条によって具体的権利として保障されているとは解し難く、合憲限定解釈・適用違憲の主張も前提を欠く。写真部分についても他の情報と同じく刑の執行に係る保有個人情報であり別異に解する理由はない。以上より本件不開示決定は適法であるから、その取消請求は理由がなく、申請型義務付けの訴え(行政事件訴訟法37条の3第1項2号)も訴訟要件を欠き不適法として却下される。