銃砲刀剣類所持等取締法違反,器物損壊被告事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30わ816
- 事件名
- 銃砲刀剣類所持等取締法違反,器物損壊被告事件
- 裁判所
- 福岡地方裁判所
- 裁判年月日
- 2019年11月6日
AI概要
【事案の概要】 指定暴力団四代目甲會の二次団体である乙組本部長兼傘下組織組長であった被告人が、同組組員のA及び準構成員のBと共謀の上、平成20年1月17日午後、福岡市内のビル付近路上において、大手ゼネコンE社九州支店の社用車(普通乗用自動車)に向け、自動装てん式けん銃で弾丸4発を発射し、同車のフロントバンパー等に命中させて損壊した(損害額約38万円相当)として、銃砲刀剣類所持等取締法違反(けん銃発射)及び器物損壊罪に問われた事案である。被告人らは、犯行約1か月前から被害車両の動向を確認し、実行役・見張り役等の役割を分担して犯行に及んだ。被告人は終始関与を否認し、アリバイを主張した。 【争点】 本件犯行(けん銃発射・器物損壊)自体は当事者間に争いがなく、争点は、(1)被告人の犯人性(被告人が実行犯として関与したか)、(2)被告人とA及びBとの共謀の有無の2点である。弁護人は、共犯者B及びAの公判供述には警察の誘導や相互の食い違いがあって信用できず、被告人には事件発生時刻に乙組事務所にいたとのアリバイがあり、防犯カメラに映った実行犯と被告人とは髪型・体型が異なると主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、B及びAの各公判供述について、印象に残りやすい出来事を具体的に述べ、通話履歴や防犯カメラ映像等の客観的証拠、遺棄された原動機付自転車の発見状況により裏付けられており、両名には甲會幹部である被告人を陥れる動機もないとして、その信用性を肯定した。量販店の購入記録に関する食い違いや、駐車場特定の経緯、ヘルメット着脱の点などの供述の相違は供述の骨格部分の信用性を揺るがすものではないとした。その上で、(1)犯行前々日・前日に本件ビル付近で不審な行動をとっていた人物と実行犯は、服装・ヘルメット・原動機付自転車の特徴の一致から同一人物であること、(2)被告人が同時期に同様の作業服・白色長靴・フルフェイスヘルメット・黒っぽい原動機付自転車という装いで本件ビル付近を徘徊していたこと、(3)被告人がAに対し事前にE社社用車への発砲計画を明かし実行役を担う旨述べ、犯行直後に「終わりました」と報告し、使用した原動機付自転車のナンバープレートを取り外して遺棄したこと、(4)約1か月後に同町内で発見された同型・同系統色のホンダAF24型タクトが実行犯及び被告人が遺棄したものと考えられることを総合し、被告人の犯人性及び共謀を認定した。事務所にいたとの供述は犯行現場から約1キロメートルの距離であってアリバイたり得ず、防犯カメラの映像は鮮明でなく髪型・体型の不一致も立証されていないとして弁護人の主張を排斥した。 量刑については、暴力団組織を背景とした計画性のある犯行であり、白昼の繁華街で社員3名が乗車中の車両前面に4発を発射するという態様は、跳弾等により乗員や通行人に弾丸が当たる可能性もあった極めて危険かつ凶悪なもので、乗員らに甚大な恐怖を与え、大手ゼネコンEを威迫する反社会的動機に基づく犯行として厳しい非難に値すると評価した。被告人は自ら実行役を担い共犯者に指示を出すなど重要かつ不可欠な役割を果たしたこと、関与を一貫して否認し反省がないことも考慮し、求刑懲役12年に対し、被告人を懲役10年(未決勾留日数中280日を算入)に処した。