著作権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、映像制作を業とする控訴人(原告)が、ホテルでの挙式・披露宴のビデオ撮影を委託した被控訴人(株式会社Bee)に対し、撮影したビデオの著作権および著作者人格権を有していると主張して、著作権法112条に基づき複製・頒布の差止めと廃棄を求めるとともに、当審において慰謝料200万円の損害賠償を追加請求した事案である。 被控訴人は、グランドハイアット福岡を経営するエフ・ジェイホテルズから婚礼等のビデオ撮影業務を受託しており、平成26年11月および平成27年4月に行われた2組の新郎新婦の挙式・披露宴について、控訴人にビデオ撮影を再委託した。控訴人は撮影した映像データ(原告撮影ビデオ)を被控訴人に納品し、被控訴人がこれを編集して記録ビデオを完成させ、DVDにして新郎新婦に納品した。原審(大阪地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が本件控訴を提起した。 【争点】 主たる争点は、被控訴人が著作権法29条1項により本件ビデオ(原告撮影ビデオおよび本件記録ビデオ)の著作権を取得したか、すなわち被控訴人が同条の「映画製作者」に当たるかである。控訴人は、映画の著作物を製作する意思、法律上の権利義務の帰属主体性、経済的収入・支出の主体性のいずれにおいても被控訴人は「映画製作者」に当たらず、また被控訴人が音楽著作権料の支払を怠っていることも考慮すべきと主張した。そのほか、著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権、公表権)侵害のおそれの有無も争点となった。 【判旨】 大阪高裁は、本件控訴および当審追加請求をいずれも棄却した。 まず、本件記録ビデオについて、婚礼ビデオを適切に製作し納品する法律上の義務は被控訴人が負い、ビデオの内容を最終的に決定していたのも被控訴人であり、被控訴人が撮影料・交通費を含む経費を負担して新郎新婦から代金を受け取っていた以上、製作に発意と責任を有する「映画製作者」は被控訴人であると判示した。控訴人がビデオ撮影につき裁量を有し事前に脚本を書いていたとしても、それは控訴人が著作者であることを基礎付けるにとどまり、被控訴人が製作意思を有していたことを否定するものではないとした。また、控訴人が設備投資をしていることは本件記録ビデオ制作のためだけの支出ではなく、被控訴人の収入・支出主体性を覆すものではないとした。音楽著作権料の不払は、別途権利者との間で解決されるべき問題であって、「映画製作者」該当性の判断に影響しないとした。 次に、原告撮影ビデオについても、控訴人は被控訴人の委託に基づき本件記録ビデオ制作のためだけに撮影を行ったのであり、被控訴人による製作に参加することを約束したとみることができるから、同項により著作権は被控訴人に帰属すると判断した。 著作者人格権侵害については、控訴人は被控訴人による編集を承諾していたから同一性保持権侵害はなく、本件記録ビデオは特定の新郎新婦のためのものであって被控訴人が他に複製・頒布するおそれは認められないとして、氏名表示権・公表権侵害のおそれも否定した。以上より、当審追加の損害賠償請求もその前提を欠き失当であるとした。